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第二十五夜
「よく覚えてないんだけど、一年前の夜、俺を助けてくれたんだよね。前にも会ったことがあるの?」
「ない」
「うそだ。顔を見せて」
逃げようとしたレイの腕をジャックが掴んで引き寄せる。反動で向き合う形になり、とっさに顔を背けた。
「私はバケモノだ。近づくとおまえも呪われるぞ」
「俺も? じゃあレイは呪われてるの?」
突き放そうとしたのに以前と変わらない呼び方で呼ばれ、胸が詰まった。喉がひくりと震えて視界がにじむ。
ジャックがそっとレイの顎をつまんで上向かせた。月光が映りこんだ金眼をじっと見つめ、彼は小さくほほ笑む。
「こんなにキレイなもの、初めて見た……」
これは月が見せる幻だろうか。
その手を振り払うことができず、レイはそっと目を伏せた。
ジャックの首元でバーンブラックの指輪が揺れている。
平行線上に咲く愛しき者の幸せだけが、レイの最後の希望だった。
おわり
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