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第二十四夜

 街の人間に気づかれたのかもしれない。身を固くした直後、レイの瞳が限界まで見開かれた。  名前を呼びそうになり、慌てて言葉を飲みこむ。見間違えるわけがない。レイは無言のまま立ち上がって背を向けた。彼から見ればレイは醜いバケモノだ。 「ま、待って! あの……レイ?」  遠慮がちに名前を呼ばれ、鼓動が跳ねた。呪いで記憶を奪ったはずなのに、なぜ。無言のまま立ち尽くすレイにジャックが畳み掛ける。 「やっぱりレイなんだね! ねえ、俺のこと知ってる?」 「なぜ私を知ってる?」 「あなたのことを探してたんだ」  彼は紙を束ねて冊子にしたものを差し出した。これは――ジャックが文字の練習用に作ったものだ。開かれた場所にはひどくつたない字が並んでいる。  ――レイは助けてくれたのに、みんなに石をなげられた。レイのせいだっていわれた。たくさんケガをしてた。しんぱいだ。  一晩中心配で眠れなかった、と言っていたジャックを思い出し、胸が切なく痛む。

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