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第二十三夜
虚ろな瞳をしたジャックはふらふらと外へ向かった。扉の前で一瞬立ち止まった気がしたが、そのまま十二年間暮らした家を出て行った。
――誰よりも幸せになれ。おまえはおまえのいるべき場所で。私は私のいるべき場所で、ひっそりと死を待とう。
* * *
遠くでハロウィン祭の炎が揺らめいている。季節は一巡し、山を降りたレイは途中で足を止めた。昨年の騒ぎはまだ人々の記憶に新しい。
ジャックを拾った山道からほど近い場所にある、小さな泉まで引き返した。岩場に腰をかけ、あの子は今頃どうしているだろうと思い巡らせる。きっとエマと仮装をして、楽しく過ごしているに違いない。とても自然で、とても遠い世界だ。
ふと水面に映った包帯男をのぞき見る。呪力を酷使したおかげで痣の進行は一気に早まった。顔を覆う包帯をほどいて侵食具合いを確かめる。息の根が止まるまであと少しだ、とほくそ笑んだ刹那、背後で草木が揺れ、大きな影が飛び出した。
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