22 / 25

第二十二夜

「……そうだ。おまえを愛してる」  真っすぐに瞳を見つめて伝えると、ジャックが破顔した。 「レイ、初めて好きって……愛してるって言ってくれた!」  ガバっと抱きしめられる。もうなくなったはずの尻尾がブンブン揺れている気がした。レイも背中に腕を回して抱きしめ返す。これが刷り込みだったとしても、愛にかわりはない。  レイは小指にはめていた安物の指輪を鎖に通すと、ジャックの首にかけた。 「これは幸せのお守りだ。おまえを拾った日にこれを手に入れて、それからずっと私は幸せだった。次はおまえの番だ」 「俺はもう幸せだよ。変なレイ」  言葉通り幸せそうに笑って、ジャックがレイに口づける。応えるように後頭部に回したレイの腕から、黒いもやがゆらりと立ち昇った。それはジャックの頭頂を突き抜けて内側へ潜りこむと、一人のバケモノの記憶を引きずり出す。 「ジャック、今まですまなかった」  唇を離したレイが、もう届かないとわかっていながら、ジャックの肩にスリリと額を擦りつけた。黒煙は記憶の欠片を灰に変えていく。はらはらと、粉になった記憶が金糸の上に降り注いだ。 「元気で」

ともだちにシェアしよう!