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卒業式
そして卒業式の日。
とうとうこの日が来てしまった。
あっという間だった。圭ちゃんともお別れか……と思うと、もう既に目に涙が溜まってくる。教室に入ると泣きながら別れを惜しんでいる奴も数人いた。
卒業式も終わり、各教室で先生ともお別れの挨拶をする。全て終わってからもみんな名残惜しそうにして、あちらこちらで話をしてた。俺はすぐに教室から出て、靖史と圭ちゃんの姿を探した。
「あ! 陽介いたいた……圭ならさっき女子に呼ばれてどっか行ったよ」
靖史が俺を見つけるなりそう教えてくれる。そんな情報はっきり言って嬉しくなかった。そうだよ、圭ちゃんモテるもん……卒業式に告白しようって思う女子がいたっておかしくはない。そもそも俺だってそういう輩の一人なんだから。
うん、これはしょうがない。
俺はとりあえず校門のところにいればそのうちくるだろうと思って、靖史と二人で外に向か
った。
しばらく待っていると、靖史がちょっとトイレと言って校舎の方へ行ってしまった。俺一人校門の前に取り残される。圭ちゃん早く来ないかな、と顔を上げると向こうの方から圭ちゃんが歩いてくるのが見えた。
やっと来た! 嬉しさと緊張感がこみ上げる。ドキドキしながら待っていると、誰かが圭ちゃんに声をかけ、その場で立ち話を始めてしまった。圭ちゃんは俺に気がついていないから、これといって急いでくれるわけでもなく、楽しそうに話を続けている。まだかなあ……と待ってるうちにドキドキも落ち着いてきた。
しばらくすると話が終わったのか、圭ちゃんが一人でこっちに向かい歩いてきた。
幸いもう周りには誰もいない。
チャンスじゃね?
……言うなら今しかないよな?
再び心臓が飛び出るほど早鐘を打つ。
そんな俺の心情を知らない圭ちゃんが俺に気が付いて満面の笑みを浮かべて走ってきた。
やべえ! 可愛すぎる! 頑張れ俺!
「陽介! 待っててくれたの? サンキューな!」
「…圭ちゃん、ちょっとさ、聞いて……」
普段と変わらない圭ちゃんの態度に自然と俺も笑みが溢れる。
「なに? 陽介 」
「俺は……け、圭ちゃんの事がずっと好きだったんだ!」
とうとう言ってしまった! ど緊張してちょっと噛んじゃった……
でもその後の圭ちゃんの反応に、俺は呆然としてしまい動けなくなってしまった。
「おう! 俺もだよ! これからもよろしくな! ……あ、靖史いたいた、これからカラオケ行かね? ほら、陽介もボーっとしてないで早く行こうぜ」
圭ちゃんは後から現れた靖史の方へ走っていってしまった。
靖史がこっちに向かって歩いてきながら、この状況を察したのか気まずそうな何とも言えない表情で俺のことを見る。
このタイミング…… 間の悪さ。
絶対これ、圭ちゃんに正しく伝わってない。
俺のこの一大決心は儚く静かに消えていった。
そして喉元まで飛び出た心臓をなんとか元の場所に戻して、俺は圭ちゃんと靖史に連れられて放心状態でカラオケへ歩いた。
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