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新しい出会いと始動
頼んでいたピザが到着し、みんなで食べ始める。
周達が持参したビールもすぐになくなり、圭ちゃんちにストックしてるワインも出された。
周も修斗もよく飲むな……
この中で一番酒弱いのは間違いなく俺だ。ワイワイと飲んでるうちに、少し酔いが回ってきてしまった。ちょっと気分がいい……
でも明日は学校だから、あんまり飲みすぎるとマズいんだよな。みんな程々に……なんて思ってたら眠くなってしまった。
やべ……
圭ちゃんより先に潰れてたまるか。
思わず俺の横に座ってる圭ちゃんの腰にしがみつく。
「え? 何? 陽介どうしたの? 酔っちゃった?」
多分俺は 圭ちゃんの腰にしがみついたままの膝枕状態でうつらうつらしている。
「なに? 陽介さんってこんなに甘えん坊なの? ウケる、可愛い!」
修斗が喜んでる声が遠くで聞こえる。
「圭の事、誰にもやらん! って言ってるみたいだよな」
靖史がそう言って圭ちゃんを揶揄った。言われている当の俺は、頭がフワッとしていてどうでもいい感じに腑抜けていた。とりあえず圭ちゃんの膝枕は気持ちがいい……
「まったく、圭さんと陽介さんがラブラブなのはわかりました! スミマセンでしたね」
周が不貞腐れて、修斗は爆笑。
……うん? もちろん俺らはラブラブだよ。
ふわふわとした頭を持ち上げ、俺は圭ちゃんにしなだれかかった。全体重をかけるように圭ちゃんにしがみつき、慌てている圭ちゃんを押さえつける。
「ちょっ…… ちょっと! 陽介??」
赤い顔して慌ててる圭ちゃん、可愛い。
「 !!! 」
そのまま俺は圭ちゃんにキスをした。
「きゃー!」と騒ぐ修斗の声で我に返る。調子に乗ってしまった! と思った時にはもう遅く、圭ちゃんはこれ以上ないってくらい真っ赤になって怒ってしまった。
「……陽介は、今日は帰る?」
怖い顔した圭ちゃんが静かに俺に言う。
やだやだ。泊まるし!
「圭ちゃん、ごめんなさい……」
床に頭がくっつく勢いで俺は圭ちゃんに謝罪した。
「男同士のキス初めて見た! すげえいいね! ね? 俺 勃っちゃいそうだ!」
修斗がそう言って周に同意を求めている。
……あちゃ。圭ちゃん、めっちゃ不機嫌モードになっちゃったじゃん。なんて事言ってくれてんだよコイツは!
「お前! 下品過ぎ!」
そう言って靖史が修斗を怒ったけど、ヘラヘラと修斗は周に寄りかかり、ゴニョゴニョ何か喋っている。周がそんな修斗の頭を自分の脇に抱えながら「スミマセン、こいつ今日かなり酔ってる……」と言って俺らに謝った。
修斗って普段も酔ってても陽気だから全然変わらなく見えるし。
圭ちゃんに怒られてすっかり酔いが覚めた俺は、とりあえず食べ終わった残骸を片付け始めた。
はい……圭ちゃんのご機嫌取りです。
「お前ら今日はうち泊まってけな。遠慮しなくていいから」
圭ちゃんは周と修斗にそう声をかけた。
えー? 二人泊めるの?
「いいよな? 陽介……俺らは昨日たっぷり愛し合ったから今日は何もしねえよ」
開き直った圭ちゃんが、恥ずかしいことを言ってのけた。
……相当怒ってらっしゃる。ごめんなさい。
靖史はどんなに酔ってても自宅に帰る。枕が変わると眠れないタイプらしく、今日もさっさと帰って行った。
そんなこんなで新メンバーを加えて圭ちゃん達のバンドは始動した。
後日、バンド名はD-ASCHだと聞かされた。
バンド名の由来は、……何だったかな?
まぁいいや。
とにかくこの新しい出会いが、俺にとって人生で一番大事な出会いになった事に変わりない。
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