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仲直り

いつの間にかウトウトしてしまったらしく、気がついたら結構な時間だった。 「圭ちゃん、まだかな?」 俺はぽつりと独り言を言い、付けっ放しのテレビを消した。 圭ちゃん遅いな……とぼんやりとしていると、玄関先から鍵の開く音が聞こえた。俺は嬉しくなり足早に玄関に向かうと、圭ちゃんの後から周と修斗、靖史が顔を出した。 ……なんだよ。みんな来たんだ。 「うわぁ! マジでかっこいい部屋!」 「お邪魔しまーす!」 騒がしい修斗と、その後ろから周が入ってくる。 「陽介、邪魔するぞ」 靖史もいつものように部屋に入ってきて、これはみんなで飯食うパターンだとちょっとがっかりしてしまった。圭ちゃんにちゃんと謝りたかったのに、これだけみんながいたんじゃ言いにくい。 三人がガヤガヤと騒ぎながら部屋に入り、後から入って来た圭ちゃんが俺に申し訳ないといったような目配せをした。 申し訳なさそうな顔で俺を見るけど、しょうがないし、どっちみち周には殴った事は早目に謝りたかったからちょうど良かったんだ。きっと圭ちゃんもそういう意図でこいつらを連れてきたんだと思うから…… 周と修斗の手にはビール。 「ピザでも頼んで夕飯にしようぜ」 そう言って圭ちゃんは電話をしに行ったのかキッチンの方へ行ってしまった。 「………… 」 俺が冷蔵庫に予め冷やしてあるグラスを人数分出すと、修斗が驚く。 「わざわざグラス冷やしてんすか? スゲ! 」 嬉しそうな修斗に「圭ちゃん、おもてなし精神抜群だから」と教えてやった。冷えたグラスで飲むと美味いよね。 圭ちゃんが皿に綺麗に並べたピンチョスを片手にリビングに戻ってくる。 「なんだこりゃ! スゲー! 」 いちいち修斗はリアクション多めでちょっとうるさい。 ピーラーで薄くスライスした胡瓜をクシュっとレースのようにして、生ハムで巻いたチーズとともにピンで刺してある。そして、白い皿に並んだピンチョスのまわりを囲むように、オリーブオイルを垂らしてる。 お店に出てくるようなそれをテーブルに置くと、今度はぬか漬けを持ってきた。 婆ちゃんのぬか床らしい。 いつもここに来ると俺も必ず食べる絶品ぬか漬け。 周と修斗はポカンとしている。 「とりあえずのツマミな 」 圭ちゃんは気にする様子もなくいつも通りにテキパキと動いていた。目を丸くした周が圭ちゃんの手作りかと質問している。 「作ったって言ったって、冷蔵庫にあったのをピンで刺しただけだよ? こんなの誰だって作れるし」 そう言って、なんてことない風に圭ちゃんが答えた。 ……普通は男子はここまでのものは作れないと思うよ? やっぱり凄いよね。 しばらくすると圭ちゃんも落ち着いたので、改めてみんなでビールで乾杯をした。 「あ、周……さっきは悪かったな。ゴメンな」 周の切れた唇が痛々しい。俺はさっき勢いに任せ殴ってしまったことを周に詫びた。 「ビールが染みる……なんて、俺こそゴメンなさい。ちょっと調子乗りました」 周も俺に謝った。横で圭ちゃんはなぜだか赤い顔をして俺を見ている。 「やべー、めっちゃ美味い! 圭さん、凄すぎ!」 横で修斗がうるさく声をあげた。 「圭ちゃん、大抵のものは作っちゃうよ。料理何でも美味いもん」 修斗があまりにも興奮して喜ぶもんだから、俺まで嬉しくなってくる。 「でも、怪しいな……とは思ってたけど、まさか本当に圭さんと陽介さんが付き合ってるなんて、いやあ驚きだよ、びっくり!」 ド直球で修斗に言われ、圭ちゃんは更に顔が真っ赤っか。そうか……さっきから赤い顔をしてるのは照れてるんだ…… 圭ちゃんらしいや。 「それなのに周ってば、やらかしたよねー。あんな事して陽介さんに殴られて当然だわ」 修斗は周を見てゲラゲラ笑った。 「だってさ、圭さん すげぇ可愛いん……」 可愛いと言いかけた周の胸ぐらを、急にずいっと前に出て来た圭ちゃんが掴む。 「俺は可愛くねえよ?」 圭ちゃん、可愛いって言われるの本当嫌いだよね…… さっきまで可愛い顔をして照れてたくせに、圭ちゃん、目が怖いよ。 俺は周と修斗に「可愛い」は禁句だとこっそり教えてやった。

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