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桜舞い散る頃…… 貼り出された三年生のクラス発表の紙を、純平と一緒に俺は眺める。凄いご縁で純平とはまた同じクラスだった。 「また一緒になれたな! 運命だねこりゃ 」 純平がご機嫌で俺の肩を叩く。 「俺さ、これから先大人になっても爺ちゃんになっても、ずっと陽介とは一緒にいるような気がするよ……な? そう思わね?」 純平は嬉しそうにそう言うけど、なんだかよく聞くプロポーズの言葉みたいでちょっと可笑しい。 「お前、それプロポーズか?」 「いやいや、そうじゃないから! プロポーズじゃねぇって!」 「なに慌ててんだよ……そんなのわかってるって。お前にプロポーズされても嬉しくないからね!」 そう言って二人で笑った。 「そういえばさ、今年は陽介の弟君もこの学校入学してくんだろ?」 俺には二つ下の弟がいる。生意気でうるさい弟 康介。そして康介の幼馴染の竜太君もこの学校に入学してくる。 「いいなあ、兄弟って…… 俺ひとりっ子だからさ、羨ましいよ。弟って可愛いんだろ?」 それは幻想だ。 妹だったら少しは違っていたんだろうか? とにかく弟の康介はむさ苦しいし鬱陶しい。ちょっと前までは反抗期だったのか俺の存在なんて全無視で静かなものだったけど、高校入試が終わった頃からやたらと俺に纏わり付いてくるようになった。可愛いなって思った時期もあったんだけどな…… 「可愛いわけねぇだろが。生意気でムカつくよ。毎日うるせぇし……」 どちらかというと、竜太君みたいなのだったら弟に欲しいかもな。物静かで優しそうだ。 あ…… でも竜太君もまた違った意味で面倒くさいタイプかもしれない。竜太君が大人しい理由は、人付き合いが上手くできないから。所謂「不思議ちゃん」俺の周りにはいないタイプだ。今はどうなんだろうな? 少しは普通になったかな? 何年も会ってないから久し振りに会いたいな、なんてちょっと思った。 オリエンテーションの時間なのか、新入生がゾロゾロと廊下を移動していく。そういえば昨年の今頃もこうやってキラキラした新入生を眺めたな。そして屋上にサボりに行って、初めて周に出会ったんだっけ。 ぼんやりと一年生の団体を眺めていたら、康介の姿が視界に入る。俺に気づいた康介がブンブンと嬉しそうに手を振ってきた。 「うゎっ! 何あれ可愛い! ほらほらお兄ちゃん、お前も手ぇ振ってやれよ、弟君にさ」 そう言って笑いながら純平は康介に手を振った。あんなんでよければリボン付けてくれてやるよ…… それにしても、康介の隣にいたのは竜太君だよな? 最後に見たのは中一くらいだったかな? それ以来会ってなかったけど…… 凄いな、あれは。康介も一緒にいるなら言ってやればいいのに…… あれで前見えてんのかな? ってくらいモサモサに髪が伸びている竜太君。 確か可愛い顔してたはずだけどあれじゃあ勿体無いな。高校生にもなればオシャレとか気にし始めるだろうに、あれは全然気にしてなさそうだ。まあそんなのも竜太君らしいけどね。 そんな事を考えながら、俺と純平は教室に戻った。

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