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第42話 見せつけられる征服③ ※

「んあっああっ、いや、だ……!だめっ」  よく音が反響する洞窟に、あられもない男の息絶え絶えな声と、ぐちゅぐちゅといった耳を塞ぎたくなるような水音が鳴り響く。  一誠の整った指先が、跪く狼男の尻に断続的に出入りする度に、響く声はだんだん甘さを増していった。  ズタボロになった衣服はその辺りに放置され、すっかり一糸も纏わぬ姿にされたヴォルフは一方的に一誠の責めを受け続けていた。  かつては多くの獣たちに征服契約を結ばせてきた逞しい性器が、屈辱的な状況にも関わらずその身体が感じている歓びを代弁するように存在感を強く示している。  まだイってはいないが、先からはだらだらと粘液が溢れ出ており、ヴォルフが腰を揺らす度に雫が地面に零れ落ちた。 「はあっあっんんっ、だめ、だめぇ、ナカ、なんか、なんか変な感じがするっ」  昨晩では感じたなかった類の強い快感が、迫りくる感覚にヴォルフは焦りの言葉を口にする。 「契約の強制力を使わなくても気持ちよくなるようにしているんだ」 「い、いいらないっ気持ちよく、なりたくないっ!」 「でも気持ちよくないと、皆の視線が気になって、気まずいんじゃないか」  一誠の中を探る動きがそう言いながら弱くなると、ヴォルフも少しずつ快楽に押しのけられた理性を取り戻していく。  途端、ヴォルフは自らに向けられた臣下たちの視線に気づき、燃えるような羞恥に身悶えした。 「いやっ!やめろ!お前たち、こんなところ、見るな!」  じわりとヴォルフの目尻に涙が滲む。  痛々しい主の姿に臣下たちも悔しいやら、悲しいやらで顔を悲痛に歪ませるが、同時に淫らに色づいていく組み敷かれる王の姿に、どうしようもない美しさと儚さを感じざるを得ない。 「ほら、我を失っていないと持たないだろう?気丈な態度を保ったまま、気持ちよさに耽溺する君は、とても美しいだろうがね」 「う、ううぅ」  周囲にいる者たちの視線が辛い。こんな最悪な状況の中犯されるくらいなら、いっそ理性を手放した方が楽なのかもしれない。だが、恥も外聞もなく乱れる自分の姿を見られなくない。  ぐるぐると混乱に目の前が回るような逡巡をするが、一誠は、初めからヴォルフに選択肢を与えるつもりがなかった。 「や、ああぁんっ……!!?」  唐突に、一言の合図もなく押し込まれた拍子に、 甲高い悲鳴が上がる。  すっかり慣らされた後ろにずっぽりと収まった性器を、反射的に締め上げる。 「ぐっ……」  一誠の繊細な美貌から男くさい呻き声が漏れ、その声にヴォルフは思わず腹の中を甘く痺れさせてしまう。 「は、あ、あっ、い、いきなり、挿れるなんて、てめ、え……!」 「あまりに周囲の視線を恥ずかしそうにしていたからね。早く忘れさせてあげようかと」  文句を口にするヴォルフに、悪びれる様子もなく一誠は答える。  ヴォルフの腹に刻まれた、征服紋が妖しく光り輝く。  完全に身体を重ね合わせた二人を見て、ヴォルフの臣下たちは、本当に我らが王はあの人間の魔術師に征服されてしまったのだと理解させられた。 「ほら、集中して。皆に見られても恥ずかしくないように、私だけを感じて」 「う、あっ」  ゆっくりと身体を動かし始めると、ヴォルフの理性が再び溶け始める。  昨夜は暴力的に、一方的に一誠の好奇心と欲望を満たすための行為だったが、この時はひたすらヴォルフの気持ちいいところを重点的に責め立てた。 「ああっ、あっ、あぅ」  頭の中はあっと言う間に快楽に支配される。周囲の視線もすぐに気にならなくなって、王として威厳ある表情を保とうとしていた努力すらも忘れて、ひたすらご主人様に身を委ねる征服された獣としての性を露わにした。 「あんっ、あ、すごいっ、これ、きもち、いっ」 「素直になってきたね」 「なあ、もっと、これ、もっとぉ!」  やがて、甘えたようなおねだりの言葉さえ飛び出してきた。  これがあのウェアウルフの大公爵の姿だというのか!  理性はすっかり溶け出し、迫りくる絶頂の予感に、激しく身悶えだした。 「く、くるっ、なんか、キてる!」 「ふふ、ひときわ気持ちいいの来るよ。怖がらないで、身を委ねて」 「あ、あああっ……!!」  陸に打ち上げられた魚のように、ビクビクと激しく身体を跳ねさせる。征服紋が一瞬強い光を放ち、やがて落ち着くが、ナカイキの余韻が抜けきれず、一誠の身体が離れてもうっとりとした顔でその場に転がるままだった。  まるで、子種を植え付けられた雌が、確実に子を孕むためにじっとしているかのような様子に、臣下たちもすっかり主が身も心も支配されたことを……一誠が大公爵のさらに上の立場であることを認めざるを得なかった。    

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