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第4話
出逢って一年友人として付き合い、晴れて恋人になりお互いの家を行き来しながら尚之の大学卒業を待った。そして一緒に住み始めて2カ月で転勤を命じられた。
毎日電話はする。メールも数え切れないくらい送っている。そしてウェブデザインの仕事を自宅でこなす尚之が昨日の時点で仕事を一段落させたことも確認済みだ。
そしてこの時間。深夜零時を回った愛の巣、マンションを見上げて立っている。
いつもなら十時を過ぎればベッドに入る尚之なのに、リビングのカーテンの隙間から灯りが漏れている。
…起きているということか…
このミッションは尚之が寝息を立てているところにこっそりと入って驚かすという計画だった。
なのに尚之は起きている。
十月も後半になると深夜は冷え込む。いくらマントを羽織っているからといっても足元から冷え込んでくる。
仕方がない計画は変更してこっそりと部屋に入ることにしようとマンションのエントランスに向かった。
五階を知らせ扉が開く。突き当たりの扉の向こうに尚之がいると思えば心が跳ねる。踊り出しそうな気持ちを抑え自分の格好に我に返り、足早に部屋に向かう。
そっと鍵を差し込み、音を立てないように解錠すると、同じくそっとドアを閉めた。
すればリビングの扉の向こうから笑い声が聞こえる。
それは低く甘ったるい男の声と嬉しそうな尚之の声。重なるように笑い合っている。
俺達の愛の巣に…尚之が男を連れ込んでいる…
その衝撃に走る動悸と握り締めた手が汗滲んでくる。
ここはどうするべきか…
立ち止まったままショックで働かない頭を必死で動かし思考を巡らせていた。
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