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第3話

『知ってましたよ』 一世一代の告白を尚之は優しい面持ちで透の瞳をまっすぐに見つめ言い放った。 『知ってたって…』 『店長から彼奴は同性も恋愛対象だから気をつけろよって聞いてましたから』 親友であるレンタル屋の店長…江成がそんなことを吹き込んでいたとは思いもよらなかった透は、呆然と尚之を見つめると、その手のひらが頬に触れた。ひんやりと冷たい手は微かに震えていた。 『僕を好きになってくれてありがとう。透さんが僕を好きになってくれて嬉しい』 少し背の低い尚之は背伸びをして触れるだけのキスをしてくれた。 『これはごめんなさいのキスです。透さんの気持ちに気付いてて知らないふりをしてました。貴方の気持ち…ちゃんと伝わってます…僕は…透さんが好きです』 思いもよらない告白に手が震え出し硬直してしまった。同性を好きになる。そしてその想いの人が自分を好きになるなんてことは皆無だと思って生きてきた。一夜限りの関係は虚しさが残り若い頃に辞めた。そんな透に舞い降りたこの幸せを信じることは容易くはなかった。 『それ、本気で言ってる?俺は…男だよ?』 『知ってますよ。男性ですよね。そして僕も男です』 『ああ、どうしよう…まさかのまさかだ…尚之…本気?』 『…本気ですよ。透さんだから好きになったんです。僕が遊びで付き合えるやつじゃないって知ってますよね?』 そんなことは当然知っている。真面目で芯が強くて嘘を付かないことも。そんな尚之だから会う度に惹かれていった。 『…言質とるよ?』 信じられないからこそ、尚之の言葉を気持ちを取り込みたい。そんな欲望を確かなものにしたかった。 『僕が…ハロウィンのカボチャ…買おうかって悩んでた時…透さん、笑わずに買ってくれたでしょ。僕は馬鹿にされるんじゃないかって…思ったんだ。でも何も言わなかった。『飾ったら見せて』って…言ってくれた。嬉しかったんだ…この人なら…ってその時ずっと一緒にいたいなって思ったんだ』 尚之がキラキラした目で選んでいる姿が可愛く、飾って喜んでいる姿を想像した。その一部に自分が関われたらと透は目論んだ。 一緒に微笑み合いたい。同じ時間を物を共有したい、そしてこの先尚之と会えなくなってもそこに自分との思い出として尚之が覚えていてくれるならと、ささやかな想いを込めた。 『…ありがとう…嬉しいよ…どうしよう…とりあえず抱きしめていい?』 クスクスと笑い頷く尚之の瞳は揺れていた。頬を擦り寄せ抱きしめた尚之は触れた手よりも温かかった。

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