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不屈のラブファイター 1
――いいなぁ。欲しいなあ。
見るものを切りつけるような鋭い視線で一点を睨みつける暁。
彼があの時、あれほどまでにみっともなくボロボロにやられたのは彼の生涯において初めてだったし、何よりもボロボロにした相手—―今暁の目線の先にいる—―の近づきがたい、侵しがたいムードは、不思議な魅力を持って暁を遠ざけようとする。
ここは全国展開している日本最大手の呉服メーカー、『高杉』のある一店舗。高杉が店長として仕切る店である。
スタッフとの歓談中、困ったような顔のスタッフの指差す方を見れば、ここ最近毎日見ているいつもの顔がそこにあった。
つかつかと歩み寄ると、暁の頭を持っていたカタログで軽快な音と共に叩きつけた。
「営業妨害です。警察呼びますよ」
しぶしぶ、と言った表情で暁の姿は消えた。
営業時間が終わり、スタッフが一人、また一人と帰って行く。
着物からスーツに着替えた高杉が、一番最後に従業員出入口から店を出ると—―
「お疲れ様ぁ♪」
ヤンキー座りの暁がぺこりと頭を下げる。
暁を無視して通りすぎる高杉を、暁が慌てて追う。
「メシ行きましょメシ!」
後から肩をぽんとたたく。
「あなたと食べるとまずくなる」
不快丸出しの顔で、暁の方を振り向きもせず鬱陶しそうに歩きつづける高杉。
「なんでそうつれないんですか…え」
肩に置いた暁の手を、高杉がそっととった。
思わず暁が戸惑う。
次の瞬間、高杉はもう片一方の手に持っていたタバコの火を暁の手でもみ消した。そして徐に振り向き、声も出ない暁に、妖艶な笑みをもってこう言うのだった。
「『なんで』だと?お前が嫌いだからだよ。何度も言わせるな」
灰と火傷で赤黒くなった手など気にもせず、暁は去って行く高杉の背中を見送っていた。
「素敵な笑顔だ…」
何なんだアイツは。
ここまでやられりゃ普通、憎しみにでも変わりそうなもんなのに。
諦めるどころか日に日にしつこくなる。
まるでその仕打ちを楽しんでいるかのように—―。
おかげで仕事に支障が出て静流くんに連絡する暇もない。なんとかせねば。
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