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Don't Be 1
全国展開し、国内シェアNo. 1を誇る呉服会社『きものの高杉』。
伊織はそこの社長の、不貞の産物として生を受けた。着物のファッションショーを開いた際、そこのモデルとそういう関係になってしまった。関係は二年ほど続き、本妻にもバレるところとなっていた。 本妻が知った時にはすでに伊織はお腹におり、下ろすに下ろせない週数となってしまっていた。女は認知はいらない、一人で産み育てると泣いて頭を下げ、なんとしても産むことを希望した。
そうしていわゆる私生児となるはずの伊織だったが、母親が伊織を出産した時亡くなってしまったからさて困った。
「だから無理にでもおろさせるべきだったんですよ、どうなさるおつもりなんですか、この子?!」
荼毘にふす準備が進められる横でヒステリックに喚き立てる本妻。赤子はひとまず事情が事情なので、母親不在のまま病院で預かってもらうことになった。
「落ち着け、こんなところでよさないか」
「落ち着けですって?!これが落ち着いていられるわけないじゃありませんか?!だいたいあなたはどうしてそんなに落ち着いていられるんですか……!」
そこまで言うと膝から崩れ咽び泣いた。
生後5日経ち、経過良好な赤子は退院しなければならなくなった。
「ほら、産まれた時からもう500グラムも増えましたよ。頑張って上手にミルクを飲んでます」
看護師がにこやかにそう言っても、高杉夫妻に笑顔はない。夫は苦虫を噛み潰したような顔、妻は般若の形相。
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