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番外編 何をみせられているのか2
俺が珈琲を口に含んだタイミングで、画面の中のでは誉さんが白い人の肩に噛みついていた。
『睡眠姦の醍醐味と言えるのが、普段パートナーが嫌がる行為を自分主体で行える事ですよね。ラビットくんは痕をつけられるのをとても嫌がるので、このタイミングでつけていこうと思います』
ちゅっちゅっとリップ音と共に、相変わらずディルドの抜き差しされる水音がしている。
俺は珈琲のカップを机に戻すと、別の皿に乗っている野菜がたっぷり入ったオムレツにケチャップをかけて口に含む。
ケチャップの微かな酸味と甘味が口の中に広がり、野菜の複雑な食感が楽しい。
画面の中では痕をつけることが終わったのか、白い人の身体を反転させる。
髪と同様に白く骨張った背中や腰にかけて、赤い痕や歯形が無数に並んでいた。
『なるべく痕は見えるところではなく、パートナーの見えない所につけましょう。見える所につけるとパートナーによってはこちらの行動を警戒されたり、怒ってきたりします。開発中のパートナーだとそれがより顕著に現れますので、キスマークなど付けたくても見えない所にしましょう』
俺は2枚目の食パンにジャムを塗りながら、画面の中の誉さんに対してそもそも貴方は同意受けてないでしょと思った。
一方の白い人と言えば、誉さんの解説中はずっとディルドを抜き差しされ、誉さんの肩に顔を埋めて震えている。
少し膝立ちの様な姿勢のせいか、足が震えているのが良く分かった。
『指の方がよりパートナーの反応が分かるのでおすすめです』
『ん゛っ、あ゛ぅ』
誉さんはディルドをベッドに放り投げると、指を2本孔に押し込んだ。
先程より空気を含んだ音がしている。
指の動きに合わせて白い人の腰がゆらゆらと揺れていた。
『腰が揺れてきたら、欲しがってくれている合図なので遠慮なく挿入してあげましょう。開発中の子はパールなどを少しずつ挿入してあげてもいいですね』
誉さんがにっこり笑うのを、俺は画面の大きさを変えて口元だけにする。
最初から画面は調節しているが、油断できない。
一応誉さんは有名病院の医院長先生だ。
なるべく顔は隠す努力をしている。
たぶんお義父さんだとめんどくさがって局部にしかモザイクをかけないだろう。
『あ、膣が痙攣してきました。今回はそのまま弄ってあげます』
『お゛っ、お゛ん゛っ』
『ラビットくんは寝てても喘ぎ声が大きいので、自分の声で起きちゃうかもしれないので口にテープしますね』
誉さんはポケットから乳白色のテープを取り出したので、俺は慌てて動画を止める。
乳白色のテープは医療用ではないかと思いつつ、カタログを確認してみると一応商品自体はあった。
やはり、医療用のサージカルテープという物らしい。
一応テロップを入れて動画を再開させると、口許に布を噛ませそれをテープで十字に留めた。
『テープは交差させた後、何ヵ所か留めると剥がれにくくなります。あと、開発が気付かれたくない方はテープは医療用がおすすめですが、気付かせるのが目的の方はガムテープなど痕が残りやすいテープが良いでしょう』
俺はまたパンを齧りながら、何言ってんだこの人という気持ちで頭がいっぱいになった。
この人には何を言っても無駄なんだろうと言うことは分かりきっているので、本人には直接言わないが少し呆れる。
誉さんがコンドームを片手で器用に自分のぺニスと白い人のぺニスに装着しているシーンを片手で編集しつつ続きを流す。
『ここからは普通に好きにしていきます』
『ん゛も゛っ』
誉さんが白い人の腰を掴むと、勢いに任せて挿入をする。
白い人からはくぐもった声があがったが、確かに口の音量は小さくなっていた。
普段はボソボソに近い音量の癖に、白い人は喘ぎ声は大きい。
何本か動画を編集させられて思った。
『弱い所をトントンしてあげると、ラビットくんは寝てても腰がくねくねしちゃうんだよね』
『ん゛っん゛っ』
誉さんが下から大きくピストンをすると、キスマークや歯形だらけの白い人の背中がくねくねと誉さんを求めるように動く。
この白い人がユウさんを抱いてたと思うと、ただ滑稽でしかない。
今の白い人は完全に誉さんに躾られたメスになりさがっている。
ユウさんが、誉さんが白い人の後ろばかり弄るから勃起しなくなってきたと怒っていたのを思い出した。
これかと思ったが、他の家の事などどうでもいい。
俺や翔さんにさえ実害がなければ関係ないのだ。
「え…俺に実害あるじゃん!!」
俺は、あと一口になったトーストを皿に投げ出し頭を抱えた。
何が実害がないだよ。
白い人とセックスの回数が減ったせいか、ユウさんは俺との動画を楽しみにしている節がある。
しかも、はじめはユウさん受けの動画が多かったのに最近では俺が受け身の動画も人気があるときている。
元はと言えば、不甲斐ない白い人のせいではないか。
そう思うと、今日の夜は白い人の嫌いな物と思ったのだが、あの人他の住人と食事しないんだった。
何から何まで忌々しい。
「もぅ!」
俺は食パンの最後の一口を口に放り込み、それを珈琲で流し込んだ。
こう言う時は、お義父さんをみならってやけ食いに限る。
動画はそのままで、食器をシンクに持って行き軽く洗って水切りのラックに伏せた。
台所の一番高い所にある扉を開けて、そこに入っているお菓子を取り出す。
これまた忌々しい事に、俺と翔さんの義母であるあの外人に菓子類を禁止されているお義父さんは自分と俺にしか届かない所に菓子類を隠している。
俺より少ししか小さくない外人は、あまり上は気にしていないのかその扉は開けないので格好の隠し場所になっていた。
オレンジに近い赤と、緑色の縞におにぎりの様なキャラクターが笑っているパッケージに俺は安心感を覚える。
「はぁ。まだやってるし…」
『ん゛ぉ、む゛ぅ』
『ラビットくんは、ウサギさんなので種付けされるの大好きみたいです』
俺が席に戻ると、画面の中ではうつ伏せにさせられた白い人の背中で誉さんが腰を動かしている。
噛まれる度に、白い人からは声があがっていた。
ベッドの上には使用済みのコンドームのパッケージや、口の結ばれた中身入りのコンドームが散乱している。
『ラビットくんの乳首はピンク色だけど、こんなに伸びまーす。そして、ここをグリグリすると…』
『ん゛ぐ!ん゛ぐぅぅぅ』
少し上半身を浮かせ、乳首を左右に大きく引っ張りながら摘まんでいる部分を捻るように刺激したところで、白い人の身体がびくんびくんと震えた。
『流石に少し薄くなってきましたね。でも、新しいコンドームに変えてあげます』
『むむぅ』
誉さんが白い人の身体ごと横向きに退勢を変えると、コンドームを白い人のぺニスから外す。
新しいパッケージを開けると、かなりふにゃりとしたぺニスにコンドームを被せていく。
そのままの体勢でまた誉さんの腰が動き出したので、俺はお菓子の袋を開けた。
袋の中からは、甘くて香ばしい香りがしている。
『ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛』
『よいしょっ!』
誉さんが身体を起こし、挿入をしたまま周りに散乱しているコンドームを拾いはじめた。
挿入の角度が変わったせいか、白い人がまた身体を震わせ始める。
『あーあ。また出しちゃったの?』
誉さんは口では困った様な口振りだが、顔は実に楽しそうだ。
と言っても、視聴者には表情は見えないので声だけでは呆れているとも、怒っているとも取れる。
『これだけコンドームが揃ったら、開発した乳首にこのリングをつけて…』
もう商品が出てくると止めてカタログを見るという作業が億劫になってきた。
テロップを入れ終え、俺は先程開けたお菓子の袋に手を突っ込んだ。
三角の小ぶりの煎餅を取り出し口に含む。
カリッという食感の後に醤油と砂糖の甘辛い味が広がる。
『リングにはコンドームのデコレーションをつけます』
誉さんが白い人の乳首に着けたリング状のネジ式の器具に集めた使用済みのコンドームを結んでぶら下げていく。
こんなおっさん同士のニッチなプレイ需要があるのかと思ったが、俺が受け身の動画もそこそこ人気があるし、どこに需要があるか分からないというのがお義父さんの口癖だから俺は最後まで編集するしかない。
煎餅を齧るポリポリという音で画面の音が聞こえにくいがどうでもいい。
『じゃあ、俺も逝かせてほしいからラストスパート』
『ん゛ぉ、ん゛ごっ、う゛ぉ』
また白い人をうつ伏せにして、白い人の腕を取る。
取った腕を引っ張り、身体を引き寄せていた。
そのまま誉さんが腰を揺らしはじめると、乳首のリングにぶら下がっているコンドームがブラブラと動きに合わせて揺れる。
『う゛あ゛ぁぁぁぁ』
『あら。肩外れちゃったね』
暫く揺さぶられている白い人を眺めていると、ゴキンと何かが外れる嫌な音がした。
誉さんは気にした様子もなく、更に腰の動きを大きくしていく。
白い人は流石に寝ていても痛みのせいか、ぼろぼろと涙を流している。
流石にこのシーンは入れられないのでカットした。
『はーい。こんな感じで今回の動画は終わりますが、同意を取ることと無理は禁物ですよ』
「あんたが言うのかよ…」
痙攣している白い人を仰向けにして、自分のモノをしゃぶらせている癖に“無理は禁物”とは良く言えたものだ。
一応このシーンをサムネにするという嫌がらせをしたので、白い人は覚悟しておけと思う。
動画の終わり際には外れた肩を治していたので、少し安心した。
当然そのシーンもカットする。
「はぁ…」
精神的にどっと疲れたので、大きなため息が漏れた。
もう編集はしたくないので、編集ソフトを閉じて編集済のファイルをフラッシュメモリに入れる。
フラッシュメモリをノートパソコンから取り外してキャップをして机に放り投げた。
「おはよう」
「あ、お義父さんおはようございます。もうこんな時間か…お昼作ります!!」
疲れた目を押さえてるところでお義父さんが起きてきた。
壁に掛かっている時計を確認したらもうお昼をとっくに過ぎている。
俺はノートパソコンを机の端に追いやり台所に立つ。
俺が端に追いやったノートパソコンの画面を覗きこんだお義父さんの顔は、案の定尋常じゃ無いくらいしわしわになっている。
俺だって毎回こんなヘヴィーな動画を編集させられて胃に穴が開きそうだ。
本当に俺は何をみせやれているのだろうか。
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