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第1話

俺は、岩佐 博文(いわさ ひろふみ)。 30代半ばで既婚で子持ちだが俺には家族にも、もちろん同僚にも誰にも言えない秘密がある。 きっかけは本当に些細な事だった。 あの時は仕事が尋常じゃ無いほど忙しく、精神的にも肉体的にも追い込まれている時だった。 妻とも子供ができた事で暫くそういった行為はなく、セックスレスになっていた。 日々の鬱憤を何か非日常で、刺激的な体験をして晴らしたいと思っていた。 本当にたったそれだけの軽い気持ちだったんだと今は思う。 結婚する前に何度か先輩に誘われてニューハーフヘルスに行ってプレイをしたことはあったし、前立腺マッサージと言うのも受けた事があった。 流石に結婚してからはニューハーフヘルスには行っていないが、前立腺マッサージを受けた事を思い出して、以前から持っていた興味が一気に膨らんでいった。 + 流石に、急にゲイバーに行って前立腺マッサージをしてくれる相手を探す勇気も度胸も無かったし、勃起不全というわけでもないから病院へ行くわけにもいかない。 色々調べてみるとそういうサイトがあることを知った。 初めは探り探りで、彼らが話す単語や意味がまったく理解が出来なったが、数人とネットだけの交流していくうちに何となく意味が分かってきて、非日常な事にどんどん深みにハマって行くのが分かった。 そのうちに、掲示板でやりとりした50代のおじさんと会ってみる事になった。 俺はおじさんに、“経験は少ないがいいですか?”とメールを送信したところ、その辺は会ってから話をしようということとなった。 いよいよ、おじさんと会うという日に俺は仕事を早々に切り上げ待ち合わせ場所へと急いだ。 相手の目印はピンクのポケットチーフ。 今時ポケットチーフをしているサラリーマンはそうそう居ないだろうということでその目印に決まった。 そんな提案をしてくるおじさんとはどんな素敵紳士なんだろうと思いをはせ、待ち合わせ場所の駅に急いだ。 「ピンクのポケットチーフ。ポケットチーフっと…」 独り言が出てしまうほど自分は浮かれていた。 しばらく駅の構内をウロウロしていると、目的の人物が見つかった。 しかし、そこに居たのは頭はハゲていて、お腹が突き出した明らかにメタボ体型な中年オヤジだった。 一瞬失敗したと思ったが、掲示板でのやり取りでは変な感じもなかったし、嫌なら途中で帰ればいい。 それに後ろを向いていれば容姿なんて関係ないと好奇心の方が勝って勇気を出して声を掛けてみることにした。 喫煙所でタバコを吸っている目的の人物らしき人の側に近寄ると向こうも俺の事に気が付いた様だった。 「“フミ”さん?」 「はい。“トラ”さんですよね?」 フミとは俺が掲示板で使っている名前で、トラさんとは目の前のおじさんの掲示板での名前だ。 しかし、随分横に大きな虎だと思ったのは内緒だ。 喫煙所には帰宅時間には少し早い時間だった為か俺達以外に人は居なかった。 しかしこれからする事を考えると、どうしても普通のトーンで返事をする事がはばかられて小さく声をかけるだけで精一杯だった。 「では早速ですが行きましょうか!」 「え!ええ…」 今から会食か接待にでも行くような雰囲気で声を掛けられると、一瞬仕事モードに入りそうになる。 喫煙スペースを出て、徒歩で移動している時に自然な雰囲気でまるで世間話をするような感じで本題に入られる。 「フミさんはあんまり経験がないって言ってたけど、どうなの?」 トラさんはやさしい口調で問いかけてくる。 正直どうなのと聞かれても困るのだが。 「ニューハーフヘルスで少し…」 「ほー。じゃあ受けは?」 「マッサージはありますが、それくらいですかね」 「ほぉ~」 俺が正直に答えるとトラさんは贅肉のついた顎に手をやり、顎をさすってなにやら考えているようだった。 本当に端から見ると上司と部下の移動中に見えるだろう。 「着いたよ」 「え?」 しばらくそんなやり取りをしながら歩いているとトラさんが急に立ち止まった。 俺がふと顔を上げると、そこには何処にでもありそうなビジネスホテルの玄関が目の前にあった。 てっきりラブホにでも連れてこられるのかと身構えていたので拍子抜けしてしまう。 「ここのホテルはマンションタイプだから、気兼ねなく使えて快適なんだ」 「そ、そうなんですか…」 口ぶりからするとトラさんはこういった事に随分慣れている様子で、今更なから少しドキドキとしてくる。フロントで用事があるからと少し遅れて入って来るように言われ、俺は近くのコンビニで飲み物を購入して戻ってくる。 すると調度トラさんがエレベーターに乗るところだった。 俺は急いでエレベーターに飛び乗ると、扉が閉まると同時にトラさんが俺の尻をガシッと鷲掴みにしてくる。

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