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番外編『冬』ー前ー

「……おやおや、また裸のままで……」  目を覚ますと、私の傍で陽路(ようじ)が寝息を立てておりました。  昨夜は、珍しく陽路と二人きりでまぐわっていたのですが、湯を浴びた後、あれほど服を着なさいと言いつけておいたのに、ふんどし一丁という寒そうな格好で眠っています。  (わたくし)は枕元に畳んでおいた羽織を陽路にかぶせ、その上から布団を掛けてやりました。陽路はそれに眠りを妨げられることもなく、赤子のように無垢な顔で眠り続けています。  ぼさぼさに乱れ、垢じみていた髪も、今はすっかり柔らかな焦茶色。出会った頃は痛々しくも痩せぎすだった身体にも、今はほっそりとした筋肉が備わり始め、健康的な肌の色は眩しいほどです。  くるっとした大きな目や、よく笑う口は朗らか。陽路の笑顔はあたりを明るく照らすほどに華やかで、今ではすっかり、村の人々にも愛される存在になっております。 「……うぅ……ん。くすぐってぇ……」 「陽路。身体が温まったら起きましょう。もうお天道様はお顔を出しておいでですよ」 「んー……うー……さみぃよ……」 「やれやれ……」  寝ぼけ眼で私の手を掴み、布団の中へと引っ張りこもうと頑張っているようです。生意気なことを口にすることも(おお)ございますが、こうして甘える姿はまだまだ童。愛らしいものです。私もついつい甘くなってしまいます。  仕方がない……と、自ら布団に入り込むと、すぐさま陽路がぎゅっと私に抱きついてまいりました。私の平坦な胸元に顔を寄せ、匂いを嗅いだりすりすりと頬ずりする様子がまた愛らしく、私は陽路の頭を撫でながら、あたたかなぬくもりに目を閉じました。  すると、陽路は私の単(ひとえ)の襟元をぐいと開き、昨晩さんざんいじめ転がされた胸の尖に、ちゅくちゅくと舌を這わせ始めました。  昨晩、まるで赤子が乳を求めるかの如く執拗に責め回されたせいでしょうか、そこはいつも以上に過敏になっているようで、思わずびくん! と身体が甘く震えてしまいます。  ですが、もはや空には日が昇る刻限でございます。こんなふしだらなことをしていていいわけがありません。 「っ……こら、陽路。おやめなさいっ……」 「ん〜……翠円、おいしい……」 「美味しいわけがありません。こら、いけませんよ」 「もうちょっと、いいだろ? ……ねぇ、気持ちいい?」 「きもちいいとか、よくないとか、そういう問題じゃ……ッ……ぁ、あん」 「ほらぁ。つんつんに硬くなってきた。……へへっ、おれまでかたくなっちまうよ」 「あ、ん……」  ぐ、と太ももに押し付けられるのは、硬く硬くかさを増す、若々しい雄芯でございます。幻と伊佐に色々と手管を仕込まれつつある陽路の責めに、昨晩はいたく鳴かされてしまったものでございました。それを思い出すや否や、身体の奥底からじんわりとした熱が生まれ始めるのを感じます。 「なぁ……いれてもいい? すぐ終わらせるからさ」 「い、いけません! お天道頭様が見てっ……ンぁっ……」 「なんで? ちょっとくらいいいじゃねぇか」 「だめです! ……よ、夜まで堪えなさい、お行儀の悪い!」 「ええ〜、そんなぁ」  しゅん、ともの悲しげな顔をする陽路がまたぞろ愛らしく、私はついつい苦笑してしまいました。  確かに、放っておいてはかわいそうなほどに、陽路のそれは隆々と布を盛り上げています。私は一つため息をつき、布団の中でもぞもぞと潜り込みました。 「えっ、なに?」 「……私が口で宥めてあげますから。今はそれで我慢なさい」 「えっ、いいの? うわぁ、やったあ」 「伊佐と幻には内緒ですよ?」 「うんうん、わかった!!」  陽路はせかせかと自らふんどしをずらし、ぶるんと元気な若い魔羅をあらわにしました。  そこから香るは、みずみずしい雄の匂い。  成熟しきっていない青い匂いにきゅんと胸を高鳴らせつつ、それをくっぽりと、口内であたためてやりました。   +  いつもは、気配を感じられる距離に三人のうちの誰かがいるのですが、幻と伊佐は、二日前から村長の用心棒の仕事を請け負って寺を出ておりますし、陽路も手習いで留守にしております。  そこにあるのは、静寂と、山あいに響く鳥獣の声、そして抜けるような冬空を温める白い太陽だけでした。 「もし。この寺の主はそちらかな?」  そんな中、私はひとり畑仕事をしておりました。すると不意に、見知らぬ男からそう声をかけられたのでございます。  年の頃は壮年、埃っぽくはありますが、なかなかに仕立ての良さそうな旅装束に身を包まれた御仁でした。  着物の裾をからげて股引を履き、脛には脚絆(きゃはん)を当て、擦り切れた草鞋を身につけておいでです。ここいらは東海道から外れた山あいの村。こんなところに旅人が迷い込んでくるのは至極珍しいことでございました。 「はい。私が、このお寺を預かっております。旅のお方、もしや道に迷われたのですか?」 「ええ、そうなんですよ。下の村で一泊の宿を取ろうと思っていたのですがね、うら寂れた村で宿屋の一軒も見当たらないのです。お坊さん、今夜はこの寺に泊めてくれませぬか? 宿代はそれなりに払いますゆえ」 「そうでございますか、分かりました。何もないところではございますが、どうぞごゆるりとなさってくださいませ」  丁寧な物腰で、立ち居振る舞いにも品の良さを感じさせる御仁に、私はすっかり気を許しておりました。  にこやかに旅の疲れを労いつつ、茶の一杯でも差し上げようと着物の裾を正して畑から出ます。柔らか土で汚れた素足を手拭いで払いつつ、どこの部屋を旅のお方に当てがおうかと考えておりましたところ、ぐい、と肩を引かれました。 「な……何か?」 「お坊さま、随分とお若いですな。こんなところでお一人では、さぞかしお寂しいのでは?」 「え……? いえ、ここには他に、三人の同居人がおりまして……」 「ああ、そうなのですか。して、その方々は今どこに?」 「一人は村へ出ておりまして、もう二人は、所用にてここにはおりませぬが……」 「そうか、少なくとも、今はお一人ということですね」 「あっ……」  恰幅のいい旅人が、荒っぽく私の顎を掴みました。おっとりとした話口調からは想像もできない乱暴な扱いに、私は嫌な気配を感じ取りました。咄嗟にその腕を振り払おうといたしましたが、太い指で手首を掴まれ、そのまま木陰に押し倒されてしまいました。 「ちょっ……な、なにをなさるのです……!!」 「江戸を発ってからひと月になるのですがねぇ、そろそろ色街でも見つけて憂さを晴らそうと思っていたのです。が、道を外れたせいでまるでご縁がありませんで」  恰幅のいい男が、ぐっと私の襟元を乱暴に引きました。大きく開いた私の襟元を覗き込み、男は黄ばんだ歯を覗かせて、にたにたと卑しく笑っています。  そしてゆっくりと持ち上がった男の太い指が、ぴん、と私の胸の尖を弾きました。 「あっ……ン!」 「ずいぶんとまぁいやらしい乳をしておいでですねぇ。舐めて欲しそうに膨れ上がって」 「あっ……ぁ、ぅ……っ……さ、さわらないでくださ……ッ……」 「これは一体誰にやられたんです? ん? ご自分でなさったので?」 「あ、っ、やだ、やめてください……ッ……ン、っ……ふぅっ……」  襟元をもっと大きく肌蹴られ、胸元がすっかり露わにされてしまいました。男はにやにやと笑いながら、両手でそれぞれの乳首を摘んでは、引っ張ったり弾いたり、こすったり……と私のそれを弄びます。  昨晩、舐められ吸われと、さんざん陽路のいいようにされていた小さな尖りは、あっという間にじんじんと淫らな熱を持ち始め、ぴんと硬くしこっています。  一見まんざらでもなさそうな私の反応を見るや、男ははぁはぁと獣じみた吐息を吐き散らかし、ついには私の乳首へとむしゃぶりついてきました。 「ア……っ、ァんっ……! やだ、やめてください……ッ……!」 「そんな甘い声でやめてくださいと言われましてもねぇ。ああ……御仏に仕える身でありながら、なんといやらしい。はしたない」  じゅるる、じゅぶ、じゅぷっ……と卑しい水音を立てながら、男は私の胸をしゃぶり上げています。時折私の反応を上目遣いに確認しながら、にたりと下品な笑みを浮かべつつ、あろうことかご自分の屹立した逸物を股引から引っ張り出し、しこしこと上下に扱き始めました。 「どれどれ……? こっちはどうかな」 「あっ……! お、おやめくださ……っ……」  ぬ、と男が私の股座に手を伸ばしてきました。常日頃、三人からの与えられるありったけの愛撫ですっかり感じが良くなってしまっている私の雄芯は、こんなにも屈辱的な仕打ちを受けているにも関わらず、しっぽりと濡れて硬く張り詰めているのです。  呪わしいほどに快楽に弱い、ふしだらな肉体です。私は、情けなさのあまり泣きたいような気持ちになって参りました。ですが、男は俄然性的に興奮しはじめ、せかせかと私の股を割り、下履きに手を入れて私のそれを擦り始めました。 「やあ、ああっ……いや、です、っ……ァっ……あ、あっ」 「これが嫌がってる反応ですかい? お坊様、気をつけたほうがいいですぜ? あんたの身体からは雌の匂いがぷんぷん臭う」 「う、うそです……ッ……! ぁ、や、おやめくださいっ……ァっ……ん」 「うそつけ、どんどん硬くなってやがるじゃねぇか。下のお口も、俺の肉棒が欲しくて欲しくてひくついてんだろ?」 「や、やめなさい……!! こんなことをして、許されると……ッ、んんんっ……!!」  突然ぞんざいな口調へと豹変した旅人によって、ひときわ強く乳首を吸われ、もう片方もきつく摘まみ上げられ、私は腰をしならせて身悶えました。襟も裾もすっかり開かれ、まともに巻きついているのは帯だけといったひどい状態です。  口では嫌がっているくせに私の根からは蜜が溢れ、胸元も男の涎でぬるりと濡れています。ものすごく不快でございましたが、魔羅も乳首も、私の意思に反して快楽を得ているらしく、どちらも硬く硬く尖っているのでございます。なんという、恥ずかしい姿でしょう。 「……へへっ……たまんねぇ。今すぐぶち込んでやりたいところですがね、まずはそのありがたいお口で、俺のこれをしゃぶってくださいな」 「っ、いや、いやです……! わたくしは、そんなつもりは……っ」 「へえ、坊さんってのは随分と嘘つきな生き物なんだなぁ? 物欲しそうな助平づらをしてるくせによぉ」  恐れと情けなさと快楽の狭間で揺らぐ私の表情を見た男が、私を嘲笑っています。骨が軋むほどの力で顎を掴まれ、べろぉ……と唇を舐められました。私は思わず顔を背けようと致しましたが、男は構わず、私の口内へと舌をねじ込み、思う様舐り回すのでございます。 「んっ、やぁっ……おやめください……っ、ううっ……」 「はぁ、はぁ……色っぽいなぁ、あんた。あんたみたいな雌坊主を、村の男どもが放っておくわけがねぇよな? 仏さんへのおつとめのあとは、おやじどもに尻を突いてもらうのかい? いい村だなぁ。俺も住まわせてくれよ」 「そ、そんなことはいたしませんっ……あ、や、やめて、やめてください……っ!」  さらに接吻を迫られ、私はぐいっと顔を背けました。そうこうしているうちにも、下では褌を剥ぎ取られ、清々しい青空の下、股座を露わにさせられてしまいました。そこにとろりと触れる何かは、先走りで濡れた男の魔羅でしょうか。ぞっとしながら下を見ると、男の赤黒い肉棒が、私の後孔になすりつけられているところでございました。 「や、いや、やですっ……! だれか、誰かっ……!!」 「おいおい、うるさい口だなぁ。へへっ、接吻で塞いでやりましょう。さ、ほら、俺のこれを下のお口で、慰めてくれますよねぇ?」 「やめてください! ぁ、いや、そんな……ッ……」 「……へっへへへ、うまそうな尻だなぁ。この熟れた孔をごらんなさいよ、初めてじゃねぇんだろ。いい加減大人しくしやがれ」 「っ……!」  ばしん! と頬をひっぱたかれ、鋭い痛みと屈辱に、私はぎゅっと目を瞑りました。  ――ああ、幻、伊佐、陽路……!! 助けてください、お願いします……!!  長年お仕えしてきた御仏に縋るのではなく、私は一心に三人の名を呼びました。  すると……。 「お〜やおやおや? こんなところで何をしてんのかなぁ?」  ふわりと香るのは、伊佐が好んで使っている香のかおり。  はっとして顔を上げると、今まさに私に男根をねじ込もうとしている男の肩に、伊佐が腕を回しているではありませんか。安堵のあまり、思わず全身から力が抜けてしまいました。 「い、さ……」 「よぉ翠円、今帰ったぜ」 「な、なんだお前……!!」  突然現れた美貌の男に、旅人も目を奪われている様子です。  普段は女人の好みそうな柄ものの着流しばかり身につけている伊佐ですが、仕事のある日ばかりは、きちんと袴をつけて羽織を身にまとうのです。そうして凛々しい格好をしていると、伊佐の男ぶりがぐっと上がって、まるで良家の若武者のようでございます。  伊佐は男の肩をぐいと引き、私から引き剥がしました。急いで散らばっていた衣を集めて肌を隠していると、伊佐がすいと私の前に立ちました。さりげなく、私を背中に庇うように。 「ところでよぉ、あんた誰? 嫌がってる坊さん相手にしたって面白くねぇだろ、俺とどうだい?」 「え? な、なんだと?」 「ほうら、俺の方がよっぽど別嬪(べっぴん)だろ? 坊さん無理矢理犯してみろ、地獄行きだぜ」  男を煽るように婀娜っぽい表情を浮かべながら、伊佐は自らぐっと襟を引き下げ、白い肌ときれいな鎖骨を見せつけます。一体何をするつもりなのでしょう。幼い頃に男たちに乱暴されていたことを、今も夢に見て(うな)される伊佐が、まさかこんな男の相手をしようなどというのでしょうか。  すると、男はごくりと喉を鳴らしつつ、卑しい笑みを浮かべました。

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