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第1話 10月25日 PART.1
金色に輝く招待状にはコウモリやジャック・オー・ランタン、4つの塔が特徴的に曲がった城のシルエットが浮かんでいた。そして、確かに署名は『HOTEL CONSOLATA』で、宛名には『印南星龍(いんなみせいりゅう)様』とある。
「本当に来ちゃった……」
印南は招待状を鞄から出すと、まるで西洋の古城のような煉瓦造りのホテルの玄関前に立つ。ガラスではなく、木製のドアだが、自動ドアのようだ。重厚な造りの扉はぎぃと鳴り、印南を招くようにひとりでに開いた。
印南がホテル・コンソラータに来ることになったのは、1つは1ヵ月前の25日、いつになく酔っぱらっていたからだった。そして、もう1つは今、働いている会社へ勤続するか辞職して、転職するかを迫られて、インターネットを見ていたからだった。
印南の働いている会社……というより、印南の属している支店は他支店と合併することになり、印南は会社に残るかどうかを会社から迫られていた。
愛社精神なんてものはあまりない。
だが、大学を卒業してから12年間、その会社で働いてきた。給与や人間関係にも全く不満を持ったことがないとは言わないが、強く不満を持ったこともない。
だから、印南は悩んでいた。
いつも高校で一緒に過ごしていた3人のうち、1人は独身だが、昨年、企業を興して社長になっていた。1人は中学校の教師で、最近、4児の父親になっていた。もう1人は看護師で、今年、患者だった病気がちな女性と結婚したが、お互いがそれぞれを支え合っていく夫婦になっていた。
こんなかつての仲間達の輝かしい人生に印南は何だか、自分だけが世界から取り残されたような感じになってしまった。
求人サイトを見ては悩んで、酔っぱらって、また悩んで弱っている時に、『最高の癒しを貴方に』というバナーが目に飛び込んできたのだ。
「へぇ、最高の癒し、かぁ……」
印南がバナーをクリックすると、豪華特典付きの金色を含め、銀色、緋色、オレンジ、紫のホテルの招待状が抽選でもらえるというアンケートが開始される。普段はそういう類のものには全く目も向けないのに、
「まともに有給とったのなんて、数えるくらいしかなかったしな」
紫かオレンジか何色かは分からないが、仮に招待状がもらえても、もらえなくても良い。何故だかそんな風に考えて、この夜の印南はホテルへの招待状にそそられてしまい、全て答えてしまった。
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