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4. オマケノハナシ②

SIDE ??? 「お母さん!響に写真送るけど、この前撮ったお母さんとお父さんの写真も入れていい?」 「いいわよー」 「手紙は?」 「手紙?そんなの書いてる時間ないわ」 「...相変わらず冷たいね。響と暁斗さんにも結局会わなかったし。」 「忙しかったのよ。しょうがないでしょ?」 「だけど!...暁斗さん、不安かもしれないよ?お父さんは海外だから仕方ないにしてもお母さんは日本に居たんだし...あの日だってホテルまでは二人とも来たのに...」 「だーかーら!会食が入っちゃったのよ。結城も言ってたでしょ?反対してないし好きにすればいいって。」 「...でも...。...お母さんは響の恋人に会いたいとか...思わないの...?」 「思うわよ。」 「じゃあなんで!」 「...しつこいわねー。...ほら、手紙!書いたからこれも送っておいて。」 「え!?」 「じゃあ私出るわ。家のこと頼んだわよ、瑞希。」 「ちょ、お母さん!?」 プライドが高く、素直な気持ちを言葉にすることは中々出来ずに居た自分。 作り物のような自分を好きだと言う男は何人、何十人といたけれど、どれも『恋』だの『愛』だのそんな気持ちにさせてくれるような『運命』を感じる出会いではなかった。 (響はちゃんと出会えたのね...) 背中越しに聞こえる娘の声。 それはきっと、『どんな君でも受け入れて愛するよ』と言ってくれた、あの人と出会うことが出来たからこそ聞こえる声。 ーー恋愛なんて出来ない、そう決めつけていた自分が初めて心の底から好きだと思える相手に出会った時、今まであったプライドがガラガラと崩れ落ちるような思いをしたのを今でもハッキリと覚えている。 人の気持ちは目で見て確認できるものじゃない。 だからこそ相手が自分のことをどう思っているのか心配で、不安で、嫌われないか悩んで... でも、あの人は言った。 『大丈夫、どんな君でも俺は愛してるよ』 目を細くして微笑む姿に、心底安心した自分。 もうずっと前のことだけれど、思い出すと心が暖かくなる大切な思い出。 「ふふ...っ、」 何処か昔の自分に似ている、と感じた相手がまさか息子の恋人だったとは...。 恋人の話をしている最中、彼は無意識で『響くんは』と口にしていた。 イケメンで年上、と聞いていた息子の恋人は驚く程に息子を愛していて、それでもって素の自分を受け入れてもらえるのかを悩んでいたよう。 その姿は若い頃、初めて人を愛する気持ちを知った自分によく似ていた。 だから何時間もカフェで話を聞く、だなんてことが出来たのかもしれない。 『大丈夫』 そう言ったのは響がカミングアウトした日、その瞳があまりに真っ直ぐで真剣だったから。 この子はいつの間に『愛』を知ったのだろう? いつの間にこんなに強くなったのだろう? ...親の自分が言うのはおかしいけれど、驚く程に響が立派に見えて、その気持ちを疑うことなんて出来なかった。 本当に恋人を愛していると、すぐに分かったから。 きっとその浮気相手として疑われているのは娘なのだろう。 私自身、『暁斗さんにサプライズしたい』と今夜響から呼ばれているのだから。 頭を抱える彼に全てを話してしまいたい気持ちを抑えたけれど、別れ際に『暁斗さん』と名前を口にしたのはちょっとした悪戯心。 息子の恋人からあれこれ聞いてしまってから母親として会うなんて、恥ずかしくてとてもじゃないけど出来なかったから...せめてものアピールだったのだ。 「...大丈夫。あなた達なら絶対幸せになれるわ...」 ふと出た言葉、それは愛する息子とその恋人に直接伝えたかった言葉。 恋人の『暁斗さん』のあの性格じゃあ、きっとまた悩んでしまうかもしれない。 瑞希に渡した手紙とは言えない程に短いメッセージ、それはそんな暁斗さんの背中を押すものだった。 "大丈夫" だからどうか本音でぶつかってあげて。 きっと貴方の全てを響は愛しいと思うはずだから...。 車に乗り込みスマホを取り出し、電話を掛ける。  数回コールしたあと耳元に響いたのは、何年、何十年も聞いている愛しい声。 「ねぇ...次の休み、結城は予定ある?...そう、やっぱり会いたいなって...」 『そう言うと思ったよ』なんて返事に若干の恥ずかしさを感じながらも心は弾んでいた。 瑞希が響に写真を渡したあと、きっと自分のことに気付いたであろう息子の恋人はどんな顔をするのだろう? 「...ええ、今度は絶対。...ふふ、楽しみね。」 オマケノハナシ② END.

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