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第7話

「オレとか…別にたいした人生じゃないから…話すことないし…」 そう、アキラは首をかしげる。 「そんなことはないさ…君も十分、様々なことに耐えてきている…認めてあげないと、君自身が可哀相だよ…サクヤ」 手を伸ばしアキラの髪に触れながら囁く… 「……」 「手を、いいかな?」 もう一度、アキラの手に触れる為、静かに聞く。 「……?」 首を傾げながら、すっと片手を出してみる… やはりまだ少し痺れ震えている。 「さっき、少し見えて…これは?」 アキラの服の袖を少しずらし聞く… 「あぁ、これは点滴とか…検査の痕…今、一時的に入院してるから…新人のナースだったらこうなることもある」 アキラの手首の辺りには少し内出血の痕と赤い点々とした傷痕がある。 「痛々しいね、怒らないのかい?」 「まさか、慣れてるし…怒ったりしない」 微笑み、首を振る。 「私だったら怒るだろうね、下手くそ!ってね」 「ふふっ…たまに自分でした方がマシって思うことあるけど…」 自然に笑みがこぼれる。 フミヒコという人物は、会話能力が優れている為か、アキラに抵抗なく話しをさせる。 しばらくフミヒコと会話を楽しむ… 「君の部屋はいつでも住める状態にしてあるからね」 「まだ、あと数日は入院していないといけないから…退院したら」 そう返事を返し、相手をみる。 「分かったよ、食事は言ってくれたら3食用意できるからね、厨房から部屋へ運ばせるようにするから…」 「うん…お願いしとく。オレ、そろそろ戻らないと…」 頷いて席を立つアキラ。 「今日は悪かったね…」 立ち上がりワインのことを謝るフミヒコ。 「美味しかったから、ありがと…」 「ふ、君は優しいね…」 すっとアキラへ近づく。 姿勢はよく…スーツ姿が凛々しい。 アキラがその姿を見ていると… フミヒコは、くいっとアキラのあごを上げ… 優しく口づけする。 「待っているよ…サクヤ」 「…ん」 囁かれた言葉に頷く… 拒否はない。

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