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第8話

新しい生活の場、思ったより、まともな生活が出来そうで、ひとまず安心する。 タツたちの撮影を思えば… 天と地ほどの差があるから… みずきとの生活を捨てて… 病院への帰り道… 携帯電話の画面を見つめ考える。 着信あり。 みずきだ… しばらく出ようとはしないアキラ… みずきを、もう傷つけて振りたくない… (なかったことに出来れば…) お互いに…そうすれば悩まずに済むのに… みずきからのコール… いったん切れてしまった… アキラは一息ついて、みずきに電話をかけてみる。 『あ、アキラか?』 慌てて電話に出た雰囲気のみずき。 「かけるなって言っただろ?なんか用?」 みずきの声に、和みながらも…わざと冷たくあしらう。 『すまない、病室にいないから、外出しているのかと…』 「病院に来てるのか?仕事は?」 『あぁ、勤務交代があって、休みになったから…』 「そっか…」 相変わらず、みずきとの接触はなく過ごしているが… みずきは飽きもせず会いにくる。 そんなみずきに、これ以上きつくあたりたくないけれど… 自分でもどうしたいのか分からなくなっていて… 『いつ頃、戻る?』 「…わからないから、帰ってていいよ」 『…いや、帰ってもする用事もないから、戻るまで居るよ』 「…わかった。じゃな」 切ろうとするが… 『…アキラ、』 「ん?」 『…その、やはり…迷惑か?』 みずきの緊張した空気が伝わってくるようで… 「……別に」 迷惑じゃないから困ってるんだよ… みずきという存在を切り離しきれない… 自分の心が恨めしい… 『なら、待っている』 ほっとしたようなみずきの声…

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