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第9話

「じゃな」 アキラはみずきの心を感じないようあっさり通話を切る。 「はぁ…」 小さく溜息をついてしまう。 なにも知らないみずきを、また騙して裏切ってしまうんだな…。 でも、それで… みずきもいい加減、オレという人間に愛想尽かすだろ… みずきがどんなに尽くそうとも…オレの行動は変わらない… すぐ…他人と寝てしまえるんだ… そんな奴、愛し続けるのは無理な話だから… そう自分で思った時… 不意に心が沈んでしまったことに気付いて… はっと首を横に振る。 みずきとの関係を終わりにしたくない、心の奥でそう言っている自分を否定する為… 嘘の気持ちで押さえ付けるアキラ…。 みずきにわざと冷たい態度で接して… 自分からみずきを遠ざけなくては… ならない… これまでのように甘えで、優しさにすがっていたんじゃ…悲劇が繰り返されるだけだから…。 そして数日後、病院を退院してフミヒコのマンションに移り住むアキラ。 みずきには、約束通り、移り住んだところを教えた。 いまだ身体へ触れることは許していないが… 禁を破ることなく平静を装っている。 毎日でも会いたいと言ってくれるみずきだけど… それは無理だから… 仕事が休みの時で必ず連絡を入れてから来ることを約束させる。 いつかは、オレがしていること… バレる日がくるだろうけど… その時が、みずきとの別れの時… さよならする日まで、二重生活を過ごしていよう。 肉体関係をもつフミヒコとの時間… なにもしないみずきとの時間を… みずきを裏切っていること、心にもやもやとした何かが重く引っかかりをのこしているが、それを考えないように蓋をして、時が過ぎてゆく。 そして新しい生活が始まって、はや3週間が過ぎる… 生活は両者お互いにバレることなく続いていくのだった…。 《新たな場所へ》終。 《偽りの代償》へ続く。

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