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第83話
「…頼りない俺だから、アキラに色々と心配事をかけてしまうけれど、…今のように、アキラがいてくれたら…俺は何度でも立ち直れる」
みずきは、少し屈みアキラと視線を合わせて…しっかり心に語りかける。
「だから…俺なりに、アキラを支えて…アキラの気持ちを受け止めていけるように、努力するから…一緒に住もう…」
二つ目の条件は約束できないけれど…
そう、純粋に微笑むみずきの視線を見て…すぐに言葉が返せなくなる。
「……あまり真剣にならないで欲しい…オレはまた、みずきを裏切るかもしれないだろ…」
可愛い唇から零れる…試すような言葉…
「…裏切らないよ…アキラは裏切らない、信じているから…」
まっすぐ…アキラを見て頷く…
「…みずき、」
今までの自分のおこないを見て言える言葉じゃないだろ…と悲しくなるアキラだが…
「…よほどのことがないかぎり裏切ったりしないはず…けれど、そのよほどのことが起こりそうな時や起こったら、必ず話して欲しい、一人で考えずに…抱え込まずに…ちゃんと、落ち着いて聞くから…アキラ」
起こってほしくないが、思わぬ災難は、起こるかもしれない…
でもそれはアキラが望んでやる訳じゃないことを…ちゃんと分かっている。
そう伝えたかった。
「……みずき、」
そっと、アキラの顎に触れ、唇を親指でなぞり、優しく可愛い唇を奪うみずき、柔らかく時が過ぎ…
触れているだけで高鳴る気持ちを抑えつつ、そっと唇を離す。
「…深く考えずに、いつものアキラで…」
そして囁く…
「…みずき、」
「傍に居て…馬鹿、馬鹿って、俺を叱ってくれ…な、アキラ」
微笑みながら話す。
「……、ふ、なんかその言い方は…マゾっぽい…」
少し無言になっていたけれど、みずきの言葉になごんで軽く吹出して笑ってしまう。
「そ、そうか?」
アキラが笑ってくれただけで、嬉しくて身体中が温かくなる。
「ふ、マゾみずき、…また、よろしくな…」
軽くからかって、含んだようにみずきに伝え、みずきの背にすがりキスをする。
「……!」
突然のアキラからのキスに驚いてしまうみずきだったが、しっかり受けとめる…。
みずきの熱を感じながら、しかし何度聞いても…
自分がみずきに好かれる理由が分からなくて…
キスの最中も、やはりアキラの心の中は…
一時の感情に流されるな…と強く警告し続けているのだった…。
《交渉》終。
《新生活》へ続く。
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