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第82話
「無理だ、アキラは大切な人だから、優しくするのは当然なんだ…これが俺だから、アキラ…」
無理なものは無理。
「……」
「…もし怪我をした時に自分が傍に居て勇気づけてやりたい…」
「だから…お前はダメなんだよ…」
視線を下げて呟く…
「駄目…けれど、好きになった人を守りたいと思うのは…当たり前の感情だから…アキラだってわかるだろう?」
それを想うと、胸が痛む…
アキラはルードを好きになっていたんだから…
「…それは、」
言葉が続かない…
「アキラ、一緒に暮らしていたら、何がおこるか分からない…けれど、何もおこらないかもしれないだろう。危険が迫ったら、その時に一緒に考えよう…隠さずに、そうすればきっと大丈夫だから…」
この前のことはお互いに隠し事をして、最悪な結果になったから…
みずきはそっとアキラの頬に触れて、言葉にし…柔らかく抱き寄せ、優しく抱きしめる。
「……」
みずきの言うこと…そうかもしれない…と思う半面、同じ事の繰り返し…そう戒める心も存在する。
「アキラ…、…お前は優しいな」
ふと、みずきはぽつりと囁く。
「…なんで?お前の方が…」
抱きしめられた状態で首を横に振るが…
「こんな俺の事を、心配してくれるし…」
「…それは」
「俺だけじゃなく、アキラは他人でも、怪我とかしていたらほっておかないだろう…そういうところ、俺は凄く尊敬している、でも少し妬くけれどな…」
誰でも手当するアキラを見ていると…他のヤツに優しく手当なんかしてほしくない、と心の中で叫んでしまう。
みずきは、アキラの細く白い肩を腕に抱きながら…
頬を寄せ、苦笑いするように囁く…
「みずき、でもそれは、オレが痛々しいのを見たくないから…」
自分の自己中心的考えで…偉いものじゃない。
そう、うつむいてみずきの言葉を否定する。
「ひとの痛みが分かることは、心が綺麗な証拠だから…」
そう優しく伝える。
「……」
みずきに、ちがう、と…かぶりを振る。
「…アキラ」
心を褒めると…必ず認めようとしないアキラ。
自分の心は弱くて醜いと、そう…決めつけて思い込んでいるから…
本当は、誰より強い精神を持っているというのに…
けれど、そんなアキラだから…
決して自分を驕らない、その姿…愛しくてしかたがない。
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