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第2話
柳瀬は北国育ちの白い肌を持ち、マネキンのように整った容姿の長身痩躯の男である。
幼少期は女の子と間違われるほどの愛らしい顔つきだったが、思春期を越えたあたりから背が伸び、大人の色香をもった美青年へと変貌していった。
柳瀬は今年二十六になる。今は見習いで接客が主な仕事だが、伊与田に負けず劣らず手先が器用であり、またセンスも良い。あと十数年も経たないうちに、伊与田の後を継ぐことができるだろう。
商品としては提供できないものの、ディスプレイを飾るマネキンやトルソーが身に着けているスーツは、みな柳瀬が手かけたものであった。
ディスプレイの完成度に驚き、柳瀬の腕を褒める男性客も多いが、柳瀬が働くようになってから目覚ましいのが女性客の存在だ。
柳瀬の物腰が柔らかく常に紳士然とした優美な所作に虜になる女性は多い。店番としての柳瀬は、線の細さを強調するような細身のスラックスに縫い目の美しいシャツ、禁欲的なグレーのベストを身に着けており、その姿がどこか性的に女性たちの目には映るらしい。
実際柳瀬が店番に立つようになってから、女性客がぐんと増えた。
「いらっしゃいませ」
均整の取れた美しい微笑を浮かべ、柳瀬は来客の対応に立つ。今日一番の来客は先日スーツをオーダーした会社役員の妻だ。
「本日はどのようなご用件でしょうか?」
柳瀬が目元を緩ませると、女性は赤面し、平常よりも高い声で用件を告げた。
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