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第4話

 たいていここで話は尽きるのだが、今日の伊与田は機嫌がいいのか、さらに柳瀬に絡む。 「でも寂しいとは思わないのかい? 柳瀬くん、休みの日も作業所にこもってばかりで、僕は少し心配していたんだ。友達からでもいいと思う。やっぱりパートナーがいたほうが人生楽しいよ」 「――お言葉ですが、伊与田さん。私の性的指向はご存じですよね?」  柳瀬が言う性性的指向という言葉に、伊与田は言葉を詰まらせた。 「僕はあなたのことも存じているつもりです。ですがこれから先はプライベート。個人の自由にさせていただけないでしょうか」 「まあ、そうなんだけどねえ」 「用事は済みました? 締めの作業が残っているのですが」 「ああ、悪いね。呼び止めてしまって。終わったらまた鍵をかけに行くから、奥に寄ってくれ」 「かしこまりました。それでは失礼いたします」  一日中働いても少しも乱れていない完璧な姿勢で、柳瀬は伊与田の前を辞した。

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