「お兄ちゃん、キモい。」 妹の一言で自分がニヤけていたことに気づく。 だって仕方ない。 鳥羽とLINeできるなんて思ってなかったし。 返信が淡々としているのは、大方なんて返せばいいのかわからないからだと思う。 鳥羽が喋らない理由。 それは、失声症。 調べてみれば、その原因となるものは主にストレスとか心的外傷といった心因性のものらしい。 鳥羽は喋らないんじゃなくて、喋れないんだ。 そう考えると、彼の今までの行動が切なく思えてくる。 悟られまいと人を避け続けてきたのだろう。 鳥羽が失声症になった原因はわからない。 けど、寮生活をしているのとかを考えると地元で相当辛い思いをしたのだろう。 あまり地元の話をしたくないって言ったし。 (いじめとか？でもあいつ喧嘩強そうだしな…) そう思い当たるけど、首を振る。 変な憶測はよそう。 彼がいつか、俺に話してもいいと思ってくれるまで触れないのが一番だ。 連絡先をもらったのも、彼が失声症なのも秘密にしておこう。 そう思った。 放課後の彼を思い出す。 しゃがんで目線を合わせたときに気づいた。 おはようって言ったときもそうだったけど 彼は泣きそうになると目元がうっすら赤くなる。 挨拶してくれて嬉しかったって言ってくれた。 あれは嬉しさと吃驚がまざってたんだろうな。 本人は気づいてないと思うけど。 明日の学校がすごく待ち遠しい。