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第一話 Prolog

***** 「また告白だったの?」  胸に淀む嫉妬心を隠して、隣に並んで歩く男に郁人は問いかける。 「ああ。ったく、別れた瞬間これだ。ほんと面倒くせえ。」  もう何度目だろうか。ついこの前彼女と別れ、その噂がまたたく間に広がった結果、今まで諦めかけていた女子がインフルエンザ並に猛威を振るってクラスに押しかけてくるのだ。想いを寄せる女子からの告白が絶えない様子に、橘は心底面倒だと気怠げに項を掻く。 「それ、クラスの中だったら男共に殺されてるぞ。」 「はぁ、知らねぇよんなこと。女が俺を好きになるのが悪い。」 「ただのムカつく暴君だからそれ。」  理不尽だなとまで言っても、知ったことではないというように無反応。半ば呆れながら、郁人は前を向いたまま口を開いた。少しだけ、気付かないほど少しだけ、声が震えていた。 「じゃあさっさと彼女つくればいいじゃん。そうすれば呼び出し無くなるよ。」 「それも嫌だ。付き合うのはもう、しばらくしない。」 「じゃあ無理だと思う。頑張れ。」  友人から見限りの言葉を食らい、橘はクソッと短く悪態をついた。 「何で俺がいいんだろうな。フラれる可能性の方がずっと高いのに告白しに来て。こんな俺なんか好きになって何が楽しいんだか。」  最後の一言、それが郁人の耳に届いた瞬間歩みを止める。少しして不審に思った橘が振り返った。  本人の手前だと思い心に押し込めていた衝動の末端が、栓を破って溢れ出る。  ああ、もう止められない。 「俺だって、お前のこと好きなのに。」  ポロリと零れた一言は、か弱くて切なかった。

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