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二話、【俺と優さんは、】(流羽ver)
***
他の男の人に抱かれた後
優さんは普段にも増して、童話で見る御姫様に接するように優しく、甘く俺を扱ってくれる。
「…優さん、優さん、」
お風呂で身体を綺麗にした俺の髪は、優さんと同じシャンプーを使っているから匂いもきっと同じだ。
ソファーに座っている優さんに、甘えるみたいに抱き付く。
何?と俺の名前を口にして頭を撫でてくれる彼の笑顔は誰よりも格好良くて、綺麗で、心の痛みが解けてしまいそうになるほど好きで。
「なんで、ずっと…」
少しだけ機嫌の悪そうなふりをして、ごにょごにょ文句みたいなことを言ってみる。
「俺が本ばっかり読んでるから、構ってほしくなった?」
「……うん」
素直に頷けば、そんな俺を可愛がるように目を細め、そっと唇に重なる吐息。
(…わざと、だ)
今ので確信した。
優さんだって、何を不機嫌に思ってるかはわかってたはずだ。
俺が拗ねるってわかってて、読書してた。
いつもは蕩けるほど優しくしてくれるこの時間に、本に夢中になっていれば俺が悲しく思うのもわかってたはずだ。
「まだ怒ってる?」
「…ううん、」
全てわかった上で聞かれた言葉に、ふるふると首を横に振る。
キスしてくれたから、もう何でもよくなった。
嬉しくて、それだけで寂しくなくなった。
―――――――
俺達は恋人同士のはずなのに、
(まるで、)
(…飼い主とペットみたいだ)
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