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「そうか、俺今日昼から仕事なんだ。」
ちらっと見た時計は6:30。
冬休みというのはほとんど嘘だ。6日間半休で3日分の休み。というあってないような休暇体制我が社。
ブラックだ。俺達が半日いや、残業もあるから1日の3分の2を会社の仕事で潰されている間、
社長や会長はホテルのリゾートでのんびり...ブラックじゃない。
漆黒だ...
「そう、ながや...大変ながやねぇ」
「うん。あ、お前昼からどうする?泊まるとことかないならここ好きに使っていいぞ?」
俺が半日いないと言ってからどことなくショーンボリしてしまった春真に言葉を投げる。
犬耳としっぽが見えそうだ...いや、こいつの場合うさ耳か...どっちも似合うな。
「ほんと?!俺お金バス代しか持ってきてないけん助かる!」
「は?!ちょっと待て。バス代しか持って来ちょらんがかッ?!」
信じられない。この都会で何が起こるかからないのにバス代しか持ってきてないって...
「ハンコと通帳は!?金下ろすものも持って来ちょらんがかよ?!お前ソレでスリにでもあったらどうする気ながぞや、アホか?!もっと警戒心持てやッ」
こっちはあの平和な田舎とは違うんだということを15分ほど説教した。
地元の方言が出るほどに叱ったのはいつぶりだろう…。
ほんとに危機感がない。
俺達の地元特有の楽観主義だ。
自転車にチェーンをつけなくても盗まれない。
財布を置き忘れもなくなったりはしない。
夜中に女一人で出歩いても何の心配もない。
そういう場所から出たことのないこういう奴が一番危ないんだ..まったく...
「朝飯、食うか?」
数分ほどの沈黙ののち、声をかけると、うつむいた頭が勢いよく上がった。俺は基本朝の料理はしない。
できないわけでもないが朝から料理なんてだるいし面倒だ。
だから昼のうちに米を多めに炊いて朝は米とインスタント味噌汁のローテーション。
「あ、食べる。ブリ、持ってきた。」
・・・今なんと言った?
ブリ?ブリって言った?
あのブリ大根とか照り焼きとかカマ塩焼きにする奴?
あの漁師町の湾内では養殖も盛んだ。
ブリ、マグロ、ハマチなど、そこそこ高級な魚がコワリと呼ばれる囲いの中で泳ぎ回っている。身内や地元の人間には出荷できない魚を安く提供してくれたりもする。
「半身か?一節か?」
「調理済み。母さんお手製のブリ照り。昨日の晩ごはんの残りです。」
じゅわっと溢れる脂、口の中で解ける身、あの何とも言えない歯ざわり……。想像しただけで口の中が潤う。
養殖と言ってもあの黒潮から栄養分を引き込んでいる海で育てている。天然と一緒に並べても引けを取らない。
と俺は思う。何なら、より栄養管理がしっかりされてるから天然物よりうまいかもしれない。
「喰う。グリルに入れろ。もっかい焼くぞ」
魚は俺には扱えない。そもそもグリル使ったことない。かばんの中をゴソゴソやり始めたあいつに背を向け俺はキッチンに立った
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