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「はい。代わりました。ご無沙汰してます」 『おー、周一久しぶり。元気にしちょるか?』 「はい、おかげさまで」 『随分大人な対応ができるようになったにゃぁ』 「そんなことないですよ、まだまだで…」 『おら相手に敬語が使えよるじゃいか、それだけでも大した進歩よ。』 春真とは違う一昔前の方言の使い方 ・・・大人だ。 と感じるのはこういう時だ。 俺達の時代よりももっと荒々しくて海の男という感じがする。 『そっちはどうぞ?こっちに帰ってきとうならんか』 「そうですね、忙しいです。暇ができたら帰りたいですよ。」 『そうかぁ、体は壊さんようにせぇよ』 「うん。おんちゃんも、酒飲みすぎたらいかんよ?」 もう長いこと使っていない方言がでた。かたっ苦しい使わされている標準語じゃない。ついこの間まで使っていたように自然に口からこぼれた。そういう感じだった。 通話画面を閉じると、そわそわと落ち着かない様子の春真が目に入った。正座してる。 「どうした」 声をかけると大仰なほどに肩が跳ねる。 人見知りが激しくて口下手で、意思表示が苦手なこいつのことだ、考えてることがわからない気がしないでもない。 「知らないヒトの部屋にいるみたい。か?」 また肩が跳ねる。 見ている方は案外楽しいが、あっちはだいぶ必死みたいだ。 首が取れるんじゃないかってくらい上下に振り乱している。 もう随分長い間俺の部屋に入ってない、ましてや民家の一部屋ではなく生活空間すべてが入った一部屋だ。そりゃ雰囲気は変わるだろう用途が違うのだから。 「なんかっ、大人っぽい部屋になったねッ」 「そりゃそうだろ大人になったんだから」 ほぼ即答したらしょんぼりしてしまった。 こういうところホントにかわi…子供っぽい、と思う...。 「で、何しに来たんだ?」 こいつが理由も連絡もなく人の家に、しかも三連休で来るやつではないことくらいはわかっている。 「えぁ、や、しゅーちゃんに会いたいなぁって、思うて…。」 目はあったまま頬に手が伸びた。なにか言いづらい事情でもあるのか。 流石にもう俺は子供じゃない。 聞くだけ野暮だろ。仕事でなにか嫌なことでもあったか、 環境でなにか大きな変化があったか、それとも 俺とよりをもどs…たくなった…か..いや、それはないな。

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