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Ennuyeux 2

 関町大雅(せきまちたいが)は愛想がよく整った顔をした男だ。  背丈は自分と同じ位だから180センチを少し超えているだろう。痩せている自分とは違い、スーツの似合う体つきをしている。歳は自分より五歳年下だ。  龍之介の姉である原清美(はらきよみ)の部下であり、高級輸入雑貨を取り扱う会社に勤めている。  初めて関町と会ったのは清美とその家族が住むマンションでだ。  義兄はバイヤーをしており、明日から海外に行く事になり一緒に飲もうと誘われたのだ。  清美から関町の話しを良く聞くからか、はじめて会ったのにそんな気がしなかった。  それを素直に口にすると、向こうも同じような事を感じたそうだ。  食事の準備は既にできているので関町を自分の隣に座らせ、ワインをグラスに注いだ。  話の中心は関町と清美で、話をつまみに義兄と龍之介は酒を楽しむ。  それも一段落した頃、関町がこちらへと顔を向けて話しかけてくる。 「えっと、佐藤さんはパティシエさんなんですよね」  清美から聞いているのだろう。関町は甘いものが好きで、何か作ってあげてと言われていた。 「甘いものが好きなんだってな」 「はいっ」 「関町君とナツメの為にタルト・フランボワーズ(木苺のタルト)を作っておいた。持ってくるよ」  冷蔵庫で冷やしておいたのをナツメと関町の分を大きめに、人数分カットする。  ナツメはその為に食事は少な目だったし、関町は酒も食事もガッツリと食べていたが、デザートは別腹なタイプのようだ。  大きめにカットされているのを見て喜んでいたから。 「頂きます」  それを食べた瞬間に、表情をゆるませこちらを見る。どうやら口に合ったようだ。 「すごく美味しいですっ!」 「そうか」  本当に美味そうに食べる。作った本人としては気持ち良くなれる表情だ。 「今度、お店に行きますね」 「あぁ、待っているよ」  その時はおまけしてやると言い、その後も楽しく酒を飲んだ。  家に帰るという関町と共にマンションを出た。火照った頬に夜風がとても気持ちが良い。 「あの、佐藤さん」 「ん?」  何かを言い淀む関町に、足を止めて言葉を待つ。 「少しだけ良いですか」 「何か話があるのか」 「はい。公園があるのでそこで」  もう少し夜風にあたりたかったので、良いかと誘いに乗ったのだが、まさか、あんなことを言われるとは思わなかった。

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