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Monopoliser 3

 関町が部屋を出ていく。  途中から変な空気になりはじめ、修復できぬまま、悪い結果となる。  龍之介がつれない態度をとるのはいつものことだ。それでも関町はあきらめる事無く絡んでくる、そういう男じゃなかったのか。 「あ……、飲みましょうか」  ソムリエナイフをとり、ボトルネックの下の当たりに刃をあてるが、長谷の手が重なりそれを止める。 「龍之介はさ、俺と同じようなタイプなんだよ」  急に何を言い出すのか。ふ、と彼を見れば、 「だって、君はすぐに俺の手を必要としなくなったもの。自分でなんでもしちゃうでしょ」  そう話を続ける。 「それは、貴方に迷惑をかけたくなくて」 「それ所か、俺に何かしてあげたいって思ってたでしょ、あの頃は」  そうだ。されるばかりじゃ嫌だった。必要とされていない気がして。 「俺だって必要とされたかったんです」 「そうだよね。俺もそう思っていたから」  それが重たいとフラれる理由にもなっているんだけどねと、長谷は笑う。 「長谷さん、何が言いたいんですか」 「自覚していないよね……。まぁ、いいや。関町君の事、あまり冷たくすると俺がとっちゃうよ」  きっと長谷はうまくやる。優しくて包容力のある男だ。  自分だって憧れた。関町だって、長谷の良さを知ったらすぐに懐くだろう。  男としても龍之介よりも格段に上なのだから。  胸がモヤモヤとし、それに耐えるように胸のあたりを掴んだ。 「でもあいつは、俺の事が好きなんですよ?」  勝っているのはそれだけ、そう思った途端に我に返り長谷を見る。  楽しそうな表情を浮かべていて、一気に顔が熱くなった。  何を言っているんだろうか自分は。これではまるで長谷に渡したくないと言っているようなものだ。 「素直になりなよ。関町君を傷つけて、君はそれに気が付いて真っ青になってたよ」 「そんなことはありません」 「しかも『俺の事が好きなんですよ』だって? 君は意外と独占欲が強いんだね」  長谷に諦めろと言っているようなものだ。 「長谷さん、あんまり俺の事を苛めないでください」  耐え切れず顔を両手で隠す。 「ふふ、俺にとって龍之介は可愛い弟だもの」 「俺、用事ができたので長谷さん、帰ってくれますか」  もう、こうなったら開き直るしかない。  そして、もやもやとする想いを関町にぶつけてスッキリしたい。 「うわぁ、冷たいのね。泊まって行って下さいじゃないの」 「あいつが妬くので」 「うわ、開き直ったよ。わかりました、かえりますー」  結局、手つかずの料理とワインは関町と二人でどうぞと言われてしまった。 「……貴方は関町の事を本気で?」 「さて、どうだろうね」  それは笑顔ではぐらかされてしまった。  長谷をタクシーに乗せ、関町の住むマンションへと向かう。  インターホンを押すが反応がなく、向かう途中で何度か連絡をしているのだが出てくれない。 「はぁ、何処へ行ったんだよ」  部屋のドアの前に座り込む。 「関町、早く戻ってこい」  ぎゅっと手を握りしめ彼の帰りを待ち続ける。そういえばいつも待たせてばかりだった。  店が終わる間、関町はどんな気持ちで待っていたのだろう。  つれない態度をとり続けてきた男なのに、めげる事無く想い続けてくれた。  それなのに、自分はどうだ。気持ちに素直になれなくて傷つけてしまった。  本当はとっくに、関町に惚れていたといのに……。

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