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Bonheur

 レセプションの招待状には、龍之介と関町宛となっていて、必ず二人で出席するようにと手書きがそえられていた。  いろいろな意味で長谷には世話になった。喜んで出席しますと連絡を入れた。  相変わらず長谷の作る料理は美味い。    久しぶりに味わい、フランスにいた時の事を思い出していたら、関町の顔が近づく。 「龍之介さん、もしかしてフランスの事を思いだしていました?」 「あぁ、その通りだ」  嫉妬したのかと軽く微笑むと、拗ねた表情を浮かべながら小さく頷いた。 「だって、随分と可愛い顔してたんで」 「お前ねぇ……」  関町の目には自分はそうみえるのか。 「仕方がないだろう」 「解ってます。龍之介さんにとって大切なものだって事は。だから、心が狭くてごめんなさい」  随分と可愛い事を言ってくれる。  恋人という関係になってから、関町の気持ちを素直に受け止め、甘えられるようになった。  ここが部屋だったら、このまま彼を引き寄せてキスをしていただろう。   「恋敵に塩を送るような真似をしちゃったな」  駄々漏れな甘い雰囲気に察したのだろう。長谷がため息交じりにそう口にする。 「長谷さん、そんな事を言って。本気じゃないでしょう?」 「いやだなぁ、龍之介、俺はいつでも本気だよ。関町君、ジュデーム」  と関町に向けてウィンクをして見せる。 「うわぁぁ」  色っぽく言われて、顔を赤くして頬に手を当てる関町に、 「何、赤くなってんだよ」  と後頭部を引っ叩く。 「あはは、本当に面白いなぁ、二人とも。からかいがいがあるよね」  つまりはそういう事。  人差し指を立て唇にふれて投げキスのような仕草をする。  はっきりしない龍之介に気が付かせる為、そして、一途な関町を応援する為に引っ掻き回したというところか。 「長谷さん、勘弁してくださいよ」  眉を落とす関町に、 「ゆっくりしていってね」  と手を振り、長谷は別の招待客の元へと行ってしまった。 「遊ばれてますよね、俺達」 「あぁ、その通りだ」  関町と恋人同士となった事で長谷にやくことはなくなったが、からかわれるのは勘弁してほしい所だ。 「やっぱりあの人には敵いません」  そんな顔をせるのですからと、手が頬へと触れた。

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