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Bonheur 3
二人の関係は清美にも知られている。恋人同士になった日に関町が連絡をしたそうだ。
姉には元々隠すつもりはないので別にかまわないが、連絡もなく突然やってくるとは思わなかった。
「あら、やだ~、お邪魔だったかしら」
と、言いつつもやけに楽しそうだ。
「姉さん」
「関町君、おはよう」
頭を抱える龍之介を無視し、関町の元へと向かう。
「清美さん、おはようございます」
まだ寝癖のままの髪に、ワイシャツとスーツのズボンという恰好。あきらかに泊まりましたといわんばかりだ。
「ふふ、やるわねぇ関町君」
と自分の首を指でとんとんと叩く。
そこには昨日の情事の痕が残る。洗面台の鏡でそれを発見した時は、目立つところに痕をつけたことに関町を叩き起こして叱ったのだが、二人きりだからと隠すことなくしていたのがいけなかった。
「えへへ、やっちゃいました」
「朝飯は?」
「食べた。珈琲を頂戴」
根掘り葉掘り聞きたいのだろう。その役目は関町に押し付けて龍之介はキッチンへと向かう。
時折、姉のキャーと楽しそうな声が聞こえる。
珈琲をいつもより丁寧に入れて時間を稼ぎ、それを持って戻ると、二人は仕事の話をしていた。
「素敵なお話聞かせてもらいました」
「そうかよ」
「関町君」
「はい」
「龍ちゃんの事、よろしくお願いします」
と頭を下げた。
「え、姉さん」
「清美さん」
龍之介と関町の言葉が重なる。
「私にとって大切な家族なの。幸せになって欲しい」
「はい、大切にします」
「なっちゃんにも教えてあげなきゃっ。あんな事とか、こんなこと……」
「関町、何処まで話したんだよ」
余計なことまで話したのではないだろうか。
「え、龍之介さんは意外とエロいとか」
「せーきーまーちっ!!」
こめかみを拳でぐりぐりとする。
「龍之介さん、痛いですっ」
半泣きの関町に、清美はそれをスマートフォンで写真を撮って笑っている。
「お前はなんでも話すんじゃねぇよ。姉さんも根掘り葉掘り聞くな、腐女子め」
「ふじょし?」
関町には謎の言葉だったか、目を瞬かせる。
「男同士の恋愛が好物なんだよ、うちの姉はっ」
「あぁ、だから、ずっと前に『期待を裏切らないわぁ』と言われたことがあったんですけど、そういうことですか」
何に対しての期待だ、それは。
「姉さんっ」
二人の間で何を話されているのか、考えるだけでも頭が痛くなりそうだ。
「ちなみになっちゃんもでーす」
てへっと可愛く小首を傾ける。
「そうなんですね。いいですね、親子で同じ趣味って」
「でしょっ」
「おい、違うだろ。俺らは良いエサなんだぞ」
天然かよと関町の頭を叩く。
「え、でも、家族に祝福されるなんて嬉しい事じゃありませんか?」
確かに家族の理解があり、しかも応援してくれるのだ。
しかも、素でそんな事を言える恋人に、龍之介の胸がきゅんと音をたてる。
「あぁ、その通りだな」
「でしょう?」
「本当、関町君はいい子ね」
清美が二人を抱き寄せる。
「お姉ちゃんは二人の味方だからね」
「ありがとう」
自分は恵まれている。
夢を追わせてくれた家族、そしてこんなにも愛してくれる恋人がいるのだから。
二人を愛おしく見つめ、そして微笑んだ。
【了】
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