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第1話
「このパン俺に譲ってよ」
まっすぐと俺を見つめる男に
一瞬で簡単にも恋に落ちてしまった
俺はいわゆる同性愛者と言うやつで、それを自覚したのは中3の夏
俺の親友に彼女ができた時だった
俺達付き合ってる、と照れ笑う親友とその隣で顔をほんのり赤く染めて微笑む身長の低い可愛い女の子
その姿はほんとにお似合いで
俺はひどく泣きそうになってひどく辛くなって
ただただ親友にあんな顔をさせるあの女の子が酷く羨ましいと思った
と、同時に自覚した
ああ、俺親友が好きだったのか
色々思い当たる節がありすぎてすぐ納得できた
元々嘘とかつけないし、つきたくない俺はすぐに親友に告白した
きっと想いは受け取ってはくれないけど理解はしてくれる
多分俺は割と混乱してたんだと思う
だからそんな浅はかなことを思ったんだ
馬鹿だな、俺は
「何言ってんのお前、きもちわりい」
あんな顔見たくはなかったのに
告白した次の日から親友のポジションも学校での居場所も、家での居場所も全て無くなってしまった
全て自業自得だ、俺は自分に甘すぎた
もう大切な人のあんな顔を見たくない
だからもう恋なんかしないって思ったのに
「ねえ?聞いてる?このパン俺に譲って」
この胸の高鳴りは確実に恋だ
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