2 / 15

第2話

俺が恋に落ちてしまった相手は同じ大学の俺の1学年上の、西谷輝という男だった 冒頭の会話から分かるようにアイツはとてつもなく自分勝手なわがままなやつだ だいたい初対面のやつが食おうとしてるパンをみて譲れとか可笑しいだろって今では思う でもそれが許されてしまうのはあのルックスとカリスマ性だと思う おまけに頭がいい、神様ってやつはなんて不公平なんだ まあ、その分性格は歪んでいるのだけど そんなやつにまんまと一目惚れしてしまった俺はなんていうちょろいやつなんだって自分でも思うよ でも見つめられた時言葉では表すことができないくらいの衝撃が走った それと同時にこいつと幸せになりたい、なんておもってしまった そんなこと無理だってわかっているのに あの出会いからもうすぐで一年経つ もう関わることなんてないのだろうと思った 「なあ、飯まだ?」 後ろからぎゅっと抱きついてきて耳元で囁くアイツ 「あとちょっとだからまってて〜〜、ってちょっとだいぶ近くない?!」 しかも俺、いま包丁握ってるし! って言えば2人してけらけら笑って アイツはもうすぐできるのにつまみぐいをしてうめー!とかいったりして それを俺が、ほんと?でもあと少しでできるし!っていったりして あの頃の自分はこんな関係になるなんて思ってなかった 今の時間がすっごい幸せだ ずっとずっとこの時間が続けばいいのに でもそれは長くは続かない 急に2人の甘い時間を引き裂く電話の音 チラッとアイツの携帯のディスプレイを見るとあの人の文字 あいつもチラッと見てそして立ち上がった さっきの時間はまるでなかったみたいに 「あ、俺帰るわ」 冷たい声でいってきて 「……うん」 いつもみたいにそう答える 俺達は恋人じゃない、そんな甘い関係じゃない アイツにはちゃんと好きな人がいて 俺はその人と会うまでの代用品 都合のイイヤツってことだ

ともだちにシェアしよう!