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第5話

   2  西園寺が提案した一泊の温泉旅行を楽しみに、周防は勤務先であるアパレルショップで笑顔を振りまく。あまりのにこやかさに同僚からは若干引かれるもの、周防は嬉しくて楽しみで仕方なかった。  周防は自分がゲイであることをオープンにしていて、持ち前の明るさと人懐こさそれに社交性から愛されキャラとして受け入れられ、特に現在の職場は人間関係も良好で日々をそつなく過ごす。  過去には己の性癖で辛い思いもしたが、それも昔として今は楽しくやっている。  来年で二十一歳を迎える周防には、両親と高校生の妹と中学生の弟がいる。けれど彼が高校二年生のとき先輩とトラブルを起こし、それが元でゲイであることが家族にばれてしまう。  その後は絵に描いたように侮蔑され、妹弟にはあからさまに拒絶されて過ごす。父に至っては生理的に受け入れられず、しまいには家に帰ってこなくなってしまった。  のちに分かったことだが、父親は職場の部下と不倫していたらしく、関係は三年以上であったらしい。母親も薄々は気づいていたようだが、あえて見ざる聞かざるを貫いていたそうだ。  けれど周防の性癖が露呈したことにより、彼を中心に周りの者たちの関係が崩れてゆく。家族を省みない父親は不倫相手のマンションに半同棲のように入り浸り、嫉妬と怒りで心を病んだ母親はすべて息子のせいだと罵るようになる。  しかしながら周防も自身が災厄であるのは了知のうえ、間接的にではあるが母から夫を奪った罪を甘んじて受け、高校を卒業するまで二年近く精神が壊れそうな罵倒に耐えた。  そして卒業とともに母と妹弟に詫びた後別れを告げ家を出た。

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