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第25話
「──おい、周防」
認めたくなかった事実と向き合ったことで、過去の傷がふたたび開き血を流し痛みに顔が引きつる。蒼然とうつむく周防だったが、店長に呼ばれ我に返った。
「! すっ、すみません」
「はあ、ったくおまえだけは……。男を見る目がないんだよ」
「はは……」
容赦のない辛辣な言葉を投げられても空笑いしか出てこない。
とはいえ店長のそれには嫌味や皮肉などは含まれてはいない、心から周防を心配するいわば親心のような思いから厳しく接しているのだ。
彼と周防の関係は高校二年の頃にさかのぼる。初めての彼氏ができたと同じくして、ショップの求人広告を見て飛び入りの面接をしてもらったのがきっかけだ。
高校生を雇うわけにはいかないと初めは断ったが、周防の熱意に根負けした店長は”高校を卒業するまでは表に出るな”という条件をつけ雇用した。
ショップの華である売り子ではなくバックヤード民に徹するのは淋しくもあるが、確かに高校生が店員としてショップ内をうろついていれば問題だろう。
それでも周防をないがしろにはせず、在庫確認や事務管理など丁寧な仕事を陰ながら評価してくれた。バイトを始めて三年後には準社員として再雇用してもらう。
チーフ職としてオーナーに打診してくれたのも店長とあり、今では返せないほどの恩を抱えた周防だった。
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