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第34話

 たとえ女でなくとも好きな相手から誠意を見せられ胸に響かない者がいようか。  とはいえ妻に隠れ浮気をするような男に誠意など皆無ではあるが、それでも周防にとっては西園寺の真摯な言葉と態度に心を動かされてしまった。  過去に何度も浮気をくり返され、その都度彼氏は自分の許に帰ってきてくれたことが周防の再構築精神を助長する結果となり、強力な洗脳によって西園寺の言葉に愛を見出したのだ。  無論アルコールが手伝ったと言えなくもないが、男の幸せホルモンであるオキシトシンが周防の脳と心に満たされ正しい判断を見失ってしまう。 「……マジで別れてくれんの?」 「ああ絶対だ、約束する」  固く誓い深くうなずく西園寺に、周防は表情を軟化せ「ん、わかった」と受け止めた。その時点でもう周防は彼のことを許しており、西園寺もまたいつものように馬鹿な恋人を大切に扱う。  早急に離婚話を進めて欲しい。そして心から安心させて欲しい。冷めた料理を腹に収めながら、そんなことを周防は彼に約束してもらうのだった。

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