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第40話

 できれば午前中のうちにすべての家事を終えたい。今日は一日どこにも出かけず部屋で留守番を頼むと言われているが、彼が戻る夕方までには九時間以上も暇がある。  せっかくの休みが日曜ということもあり、家でひとり時間を持て余すなど勿体ない。学生の頃よりバイトに就き週末に休みを満喫したことのない周防にとって、久しぶりの週末休暇を存分に楽しんでやろうと心躍らせた。  洗い終わった服やタオルを干しながら彼専用の食器でも買いそろえてやろうか、掃除機をかけながらオフィスカジュアルなネクタイでも見てきてやろうかと、浮かれながらの家事は楽しくあっという間に終わってしまう。  服を着替え髪をブローし終わる頃には、あらかたのスケジュールがまとまった。そして気づく。独身男の休日の過ごしかたが、惚れた相手の喜ぶ顔が見たいがための買い物で埋め尽くされていることに。  やれやれ。どうやら俺は、とことん相手に尽くすタイプらしい。洗面台備えつけの鏡に映る締まりのない顔を見ながら、初めて自身に隠された乙女思考を知り苦笑した。  いつもは勤務先のあるブティック街周辺で服飾小物など見つくろうが、今日は趣向を変え最近できたばかりの大型ショッピングモールに足を運ぼうかと考える。  少し遠いが時間はたっぷりある。それにここしばらく職場とアパートの往復だけで運動不足気味だ、ダイエットとリフレッシュが同時におこなえ一石二鳥だと妙な使命感に駆られてしまった。  向かう先のショッピングモールは電車で五駅。ブティック街は二駅先なので、行動範囲の狭い周防は五駅先の土地に赴くのは初めてのことだ。  それまで気づかなかった路地や小路を見つけ探検するような、なにか新しい発見ができそうな昂揚感を胸に電車に揺られ目的の駅に向かうのだった。

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