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第41話
「うおお……さすが日曜、すんげえ混んでるな」
まだオープンから日も浅く様々な店舗が集合したモールとあって、ここぞとばかりに家族連れやカップルがひしめいている。
男ひとり侘しく買い物になど訪れるには敷居が高かったかと今さら後悔した。
黒山の人だかりに揉まれ辟易とするが、けれど目的があって来たのだ達成するまで帰らないと自分を鼓舞していざ行動開始。
道なき道を縫い進み、まずはネクタイ専門店に向かう。モール入り口の壁にかけられた全体図の脇に並ぶ案内カタログを拝借し、地図代わりに照らし合わせて進み到着した。
大抵の店の売り子は女性が多いが、さすがメンズショップだけに男性店員が占めている。棚に並ぶネクタイを一本ずつ吟味しながら、これからの時期に重宝するだろう暖色のものを選ぶ。
いつも好んで着るスーツの色や職種やシーンを店員に伝え、生地の質感や太さなど細かに絞っていった。西園寺はストライプのネクタイが多いが、無難に妻が選んだものではないだろうか。
対抗意識と言ってはなんだが、少しだけアピールしてやりたいという邪な考えがよぎる。そこで地色こそ臙脂地に焦げ茶と落ち着いているが、北欧矢羽柄の小洒落た冒険心溢れる小紋ネクタイに決めた。
ギフトラッピングをしてもらい支払いを終えると、ひとつの達成感に満足を覚えたと同時に疲労が周防を襲う。これは俗にいう人酔いではなかろうか。
昨夜も西園寺に無茶な抱かれかたをしたせいで腰は悲鳴を上げている。
未だ家族やカップルなど日本中の人々が押しよせてきたと錯覚するほどの人混みにめまいがして、これは早急に買い物を済ませて退散しようと覚悟を決め店を後にした。
つぎの目的地はキッチン雑貨店。目当ての商品は西園寺用にそろえてやるつもりの、茶碗と箸それにマグカップなど。買い物思考がまるで女だぞと心は訴えるが、構わずつぎなる場所へ急ぐ。
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