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第42話

 敷地面積六万八千キロ平方メートル地上六階地下一階、出店舗数百六十の規模を誇る大型ショッピング施設──と案内カタログに記されている。  現在地は四階、目的の店舗は一階。しかも今いる場所から最も遠い端に位置してるらしい。地図を目で追い周防は堪らず「うへえ……」とこぼす。  フロアに三か所エレベーターは設置されているが、機が到着するまでに暇がかかるのが周防は好かない。主に階段かエスカレーターを使うが、どちらにせよフロアの端まで移動せねばならない。  鍋で煮える豆のようにごった返したフロア、空調管理はされているが人いきれで蒸す感じが周防は苦手だ。よしと覚悟を決めるとエスカレーターまで足を止めずに進む。 「ああ、くっそ疲れたぜ」  他人の目などこの際気にしてられるかと、周防は腕をあげ伸びをして疲れを紛らわそうとする。いい社会勉強になった、もう二度と来るものかと心に誓う。  ようやく目当てのショップに到着した。入り口から店内をのぞく。予想通り殆どは女性客が占めていて、男は彼女のつき添いで夫に至っては店外のベンチで子供の世話に徹しているようだ。  食器を求め単独の男が先陣を切るマイノリティなやつなど俺くらいかと、周防は胃の辺りがどすんと重くなってきた。  とはいえ敷居が高いと愚図愚図していては、いつまで経っても帰ることができない。はやくアパートに戻り、ベッドにダイブをして大の字になりたい。  仕方ない。さっさと選び金を払って店を出ようと店内に足を進める。しかしぴたりと周防の足が止まった。彼の向かう視線はショーウインドーで───

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