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第62話

 弱った相手はつけ入りやすい。つい絆されてしまうのがサレ側の特徴だ、それは周防が身をもって体験したからこそよく解る。  夫を寝取った者に心を開くなど酔狂もしくは馬鹿のどちらかだ。  けれど相手が同じ女であるからこそ敵であり許せない憎悪が生まれるのであって、それが異性であるのは全くのイレギュラーだ怒りの熱量も変わってくる。  そこをうまく立ち回ることによって、周防は弱った女の心を掴みそして男であることを武器に彼女の闇に光を差す立場を手に入れようとした。  初めは弱々しくも抵抗していた水緒も今はおとなしく、周防の胸にすがりしゃくりあげて泣くばかり。言うべきことは話した、あとは彼女の心に任せようと沈黙を通す。  しばらくすると水緒は「弁護士に相談する」と小さくこぼし、そして「私の味方でいてくれるのなら周防さんは訴えません」と言質をいただいた。  まじか、やった。ざまあねえぜ藤隆、てめえはもう終わりだ。  水緒のまえだというのも憚らず、抱腹絶倒しそうになり堪えるのに苦労する。今はまだ警戒心が強いだろうが、それも身体の関係にもつれ込めば何とかなる。  現に今も周防に抱きしめられても拒絶することなく、それどころか身体を預け凭れかかっている状態だ。これはもう少し攻めても拒まれないのではと考え行動に移す。 「水緒さん──」 「……んっ……──っ」  背に回していた手を肩から頬へと移動させ、少しあごをあげてやると口唇を重ねる。触れた瞬間ぴくりを身体が跳ねるものすぐに落着き、水緒は周防のされるがまま自身を明け渡した。

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