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第66話

 冷笑のまま淡々と話す周防に恐怖を覚えた西園寺、もはや謝罪など無意味と観念した。周防の後をうな垂れながら追従し、修羅場の待つ自宅へと戻るのだった。 「──では、各欄に署名捺印を」  妻が雇った弁護士に促されながら、離婚届にサインを書く西園寺。慰謝料及び財産分与など細かに記された離婚協議書に目を通し、それにもサインと捺印をして完了。  離婚届を役所に提出してもまだ安心することはできない。婚姻届の不受理申請をしておかなければ、知らず西園寺が婚姻届を再提出する恐れがある。  それら詳しいことは弁護士がすべて書類を用意し、指導のもと片付けていくと朝から夕方になっていた。  覇気と威厳それと自信に満ちた西園寺であったが、今や生命力すら感じられず弁護士が去る頃には抜け殻のようにソファで放心するばかり。  夫婦共同口座の貯金は妻のものとして、また精神的ダメージが大きく不眠症及び鬱と診断された水緒は診断書を取っており、慰謝料としては破格の八桁台を西園寺は請求されることになった。  もちろん共有資産はすでに妻の手に渡っており、従って個人口座から支払うことを余儀なくされる。両親の残した屋敷も妻の名義となり、身ぐるみを剥がされた西園寺は裸一貫で追い出されることとなった。  それまで無言に徹していた周防。水緒の手を取ると最後の復讐を開始する。

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