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第67話

「なあ藤隆。何もかも失ってみてどんな気持ちだ? 妻も金も家さえ失ってさ、都合のいいセフレからも裏切られてざまあねえな。けどそれだけじゃねえぜ、もっとすげえプレゼント用意してんだ受け取れよ」  周防の皮肉に耳を傾けていた西園寺。対席に着くふたりが取った行動に、死んだ魚のような目が見開かれる。 「──っ」  水緒の肩を引きよせると、これ見よがしに口づける。息を呑む西園寺を横目に頬を緩めながら、わざと音が立つように舌を絡めてキスを見せつけてやった。  幽霊でも見たように蒼然とした西園寺の表情は、怒りで煮え見るみる赤くなってゆく。 「どういうことだ、説明しろっ!」  ソファから立ち上がると周防に怒声を浴びせる。今にも掴みかからんとする西園寺を、けれど涼しい顔で迎え入れる周防。殴ってこようものならば、診断書を取り暴行で訴えるまで。  周防だけでなく元妻の水緒にも冷たい目を向けられ、それが罠であることをとっさに悟りすんでで手を引く。ぎりぎりと歯を軋ませ怒りを砕く西園寺に周防がとどめを刺す。 「俺はさ藤隆、おまえみたいに平然と妻や恋人を騙して浮気なんてできねえからさ、ちゃんと離婚が成立するまで待ってやったぜ」  そう話すと周防はスマートフォンのディスプレイを西園寺に向ける。

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