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第72話

 西園寺と水緒は籍こそ違えど実の兄妹。  西園寺が生まれた後すぐ父親は職場の部下と不倫仲に。水緒を妊娠して三か月がたった頃、夫の不倫相手が無言電話をくり返すようになった。  初めは誰だかわからず不気味に思った妻は夫に相談するが、子供のいたずらだろう無視していればいいと軽くあしらわれてしまう。  地方の公衆電話や非通知のコールは日を追うほどに多くなり、ついに妻は神経が疲れてしまった。ふり返れば答えは多くあったというのに、妻はひとつも不審に思わなかったのだ──夫の不自然な行動に。  ならばどうして無言電話が不倫相手からと判ったかといえば、一度だけ夫のスマートフォンより無言電話がかかってきたからだった。  それまで不気味なだけだった通話口先の相手。それが瞬時にして夫の愛人だとつながり妻は頭が真っ白になってしまう。もちろん確信はないが、けれどそう考えれば辻褄が合う。  仕事に打ち込み家庭を省みない夫に代わり、六歳になる息子を育てながら妻は行動に移す。ほぼ午前様に帰宅する夫を変わらぬ調子で迎え、寝静まった頃にこっそりとスマホをチェックした。  よっぽど妻を舐めてかかっていたのか、ロックもかけず無防備にも高いびきだ。通信系のアプリはダウンロードしておらず、会社関係や友人などのやり取りは通話とメールを主に使用。  妻が着目したのはメールのフォルダ。一見すると別段おかしくはないのだが、ひとつだけ業務的なフォルダ名が不自然に目立つ。  フォルダを開いてみれば、会食の指定場所と時間指定、日帰り出張とまた時間指定というように、やけにわざとわしい指定場所と時間の羅列が並んでいた。  そこでフォルダ名を元にアドレスをチェックしてみると同名の連絡先がヒット。それらを自分のスマートフォンに転送して、その日はモヤモヤとした気持ちのまま眠りにつく。  つぎの日。転送して得た電話番号にコール、相手は盛大に狼狽(うろた)えつづいて自爆。不倫相手から悪態をつかれた挙句、七年間も欺かれていた事実を妻は知ることになった。  夫のスマホより妻の情報を抜き取っていたのだろう、その日より遠慮のない無神経な直電やハメ撮り画像をメールで送りつけられたりと、惨憺たる地獄を味わわされたのだった。

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