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第74話

 ここで問題になったのが腹の子だ。  両親は「そんな穢れた種からできたものは孫として認めん」と一点張り。けれど自身の血を分けた子でもある母親からすれば、そんな血も涙もない鬼の心と化すことなどできようか。  離婚の際、当然の結果として養育権は妻に渡っており、後継ぎとして息子である藤隆は何不自由なく最良の環境が与えられている。  同じ種を所有しているというのに、腹の子はまるでごみのように扱われ益々心を病む結果となった。両親は俗にいう”毒親”で、洗脳されエネミー化した娘は両親の言葉に従う。  彼女には歳の離れた姉がいて、結婚はしているが姉の不妊により子がいなかった。そこで両親が手続きを済ませ、出産後に赤ん坊は姉夫婦の養子となったのだ。  父親に認知されない非嫡出子として誕生、玉のように可愛い女の子は水緒と名づけられた。すぐに養子に出された赤ん坊は西園寺にとって従兄妹という関係に。  その経緯は西園寺が高校生の時に知ることとなり、また水緒も高校生の時に知ることとなった。情報源は西園寺の母方の祖父母で、自分たちに流れる穢れた血を胸に刻めという。  それを知った西園寺は真面目ひと筋な性格が一転、父親のように放蕩な性格になってしまった。思えば祖父母によって心が壊されてしまったのかもしれない。  だが一線を越えるか否かは理性が決めるもので、誠実と淫奔をリーブラで量り浮気性になるのは男の性ともいえる弱い部分。  種の保存は男のDNAに刻まれた本能、それに突き動かされ性欲に負けてしまうのはある意味しかたのないことかもしれない。けれど妻と腹の子を愛しているならば、欲望に打ち勝ち妻子を守り通すのが男のなかの男であろう。

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