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第75話

 また西園寺は美丈夫であり女性に引き手数多。そうなれば彼女の他に股をかける女は多くまた女性も彼を放っておかない。セフレでもいいと寄ってくれば、西園寺もつけあがった。  大学に進学すると西園寺はひとり暮らしを始め、卒業して社会人になっても気軽なセックスライフを楽しんでいた。  彼が二十三歳の夏。仕事もやりがいを感じ責任感も生まれ始めた頃、両親が盂蘭盆くらい家に帰ってこいと催促の電話をよこす。  面倒ではあるが一応は西園寺の跡継ぎとしての責任から、五日間の休みを取り久しぶりに実家へと帰ることにした。そのときに居合わせたのが十六歳になった水緒だった─── 「──当時十六歳の水緒様は、物腰の優しい藤隆様と過ごされ恋をされました。しかしながらおふたりは兄妹、自身の境遇は祖父母より聞かされており、越えてはならない大きな壁でした。 ですが水緒様と五日間お過ごしになられた藤隆様は、彼女の純粋で清らかな性格に心を囚われてしまい、結果として一夜を共にされたのです」  弁護士がいうには、肌の温もりを分かち合ったふたりは心と肉体をも交わした末に離れ難くなり、結果として親の反対を押し切り強硬手段に入籍したという。  その時に関わり立ちあったのが周防に追憶を話す弁護士というわけだ。  ひと通りの懐古談を聞いた周防はまさにお腹いっぱいと放心していたが、はたと引っかかりを覚え胡乱に思うことを弁護士に訊いてみることに。 「どうしてあなたは、そんなプライベートを詳しく知ってんすか。だっておかしいでしょう。いくら顧問弁護士だからって、藤隆と水緒がつき合っただのセックスしただの、そんなことべらべらと喋ったりしますかね。 それにあんた俺に言いましたよね、結婚するならほんとうの話をしなくちゃいけないって。法を遵守する弁護士ならさ、それこそ弁護する相手のプライベートは守秘義務で話さねーんじゃねえの?」

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