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第8話

 若干たどたとしく歩く彼に先導され通されたのはリビング。飲み物を持ってくるからソファで寛いでくれと言われたので遠慮なしに座る。 「ふう……。しっかしどうよ、あの子マジで()なのか?」  思ったことが声にして口から出る俺。頭をひねり腕組みをしていると、程なくしてトレーを持った彼が戻ってきた。俺のまえにグラスを置く手は白く細くて繊細で、見るほどに男のものじゃねえよと不信が募る。  アイスコーヒーの黒と手の白さが対照的で、あの指で触られたいとかぼんやり考えていると「ミルクとガムシロップは入れますか」と訊かれ我に返った。 「あっ、いや、そのままでいっす。つかお気遣いなく」  お気遣いなくってなんだよ。すでに飲み物出してもらってんじゃねーか。ンなこた初めに言えっつんだと心でつっ込みながらも、我ながらテンパってんなと苦笑する。  だいたいがいくら可愛くても相手は男だろう、こんなこと考える自体で俺自身キモくてへこみそう。散々女と遊んで浮気して、今は嫁友の攻撃に悩まされ、トチ狂って男に走ろうってか。  いやいやそれはねーわ、道外してんじゃねえと自分を叱咤しておく。頭ンなかがぐるぐると修羅場ってると、そんな俺をじっと見ていた彼がふふと小さく笑う。 「……あ、なんすか。俺おもしろい顔してました?」  確実に間抜けな顔をしていた自覚があるだけに、かなり恥ずかしくなって逆に訊いてみた。けど「はい」と言われるとショックだ、毅然とした態度で衝撃に備える。  いただきますとグラスを取りストローをくわえたところで、彼が「確かに楽しいですが」と話をつづける。

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