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第12話

「──あんたたち……なにやってんのよっ!!」  リビングのドアが勢いよくぶっ放されたかと思えば、怒号とともに魔女が飛び込んできた。ソファに倒れ臨戦状態だった俺と音稀は飛び上がり、そろって声のかかるほうを振り向く。 「……姉さん」  ヤバい。かすかだが音稀はそうつぶやく。  確かにヤバい事態だ、間違いなく俺は魔女に呪い殺されちまう。親友が旦那に浮気されと泣きつかれ、正義心から余計な世話焼きに奮闘する嫁友──の弟に手をだす俺と今の状況。  確実に死亡フラグだろ。とりあえず事故だとでも誤魔化しておくかと口を開きかけたところで、それを制すように音稀が姉貴に話を振る。 「お帰りなさい。今ね、一将さんとエッチなことしようとしていたところなんだ、出てってくれないかな」  そうそう、出てって──って、おい待て。そうじゃねえっ!  なに取り返しのつかねえこと言ってやがんだと音稀の顔を凝視してみれば、くだんの野郎にやりとほくそ笑んで姉貴を挑発してやがった。だが可愛いツラだ。  弟に出てけと言われた姉貴は顔を真っ赤にして憤慨する。 「ああああんた、なに言ってんのよ。ばっかじゃないのっ!? はは離れなさいよっ」  音稀の言葉に狼狽えながらも香奈は行動を起こす。抱き合ったままの俺と弟を引き離そうと躍起になる。その表情、髪のふり乱す様子まですげえ怖い。あれだ、山姥。  音稀が髪を、俺が首根っこを掴まれたところで我に返る。これば不味いと香奈の手を握り抑え込むと、「これは違う、誤解だ」とテンプレ通りの言葉が口を衝く。

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